第30話

傷の手当が終わる頃には彼の顔色もよくなり、少しは落ち着いたようだ。

そのまま休めばいいものを、なぜか彼は机にナイフと銃を並べてたたじっと見つめていた。

次に使う物を選んでいるのだろうか……?



「なぁhoney」


「ん?」


「俺がなぜナイフを使うかわかるか?」


「…さぁ?」


「銃だと一瞬で終わってつまらない」



いつもと変わらず鼻歌を歌って上機嫌にしているが、殺しを考えている時の彼の目付きはどこか鋭く、そして冷たいオーラを放っていた。

初めて会った時のあのかんじ…未だに忘れられない。



「hun…まぁこれでいいだろう」



どうやら選び終えたのだろう。

次に使うナイフと銃をベストとジャケットの内ポケットにしまい始めた。

彼が身につけているスーツはオーダーメイドのようで、内ポケットにはたくさん武器がしまえるよう作られていた。

武器といっても、彼の場合ほとんどが大小様々なナイフばかりだ。



「明日も出る」


「ダメ」


「…Why?」


「怪我したばかりでしょ?どこで何してるか知らないけど、もう少し自分の体を労ったら?このままだとほんとに死ぬよ?」


「安心しろ、俺は強い」


「強くても!強くてダメ…心配するこっちの身にもなってよ」


「…随分変わったなぁ。前はあんなに怯えて震えてたお前が今じゃどうだ?俺に指図するようになった…髪を切ると女は性格が変わるのか?」



クスクス笑いながら短くなった私の髪の毛先を指でクルクルして遊び始めた。

確かに以前は丁度胸の位置ぐらいまで長さはあったが、今は肩の位置までバッサリ切った。

理由はただ1つ、写真が世間に公開されたからだ。

警察にもそうだが優翔にもあいつにも見つかりたくない…



「そうかもね」


「おいおい拗ねるなよ…髪が長くても短くても俺はお前が好きだ。こんないい女を残して死ねるわけがない」



そうだろ?と腰に手を当てグッと引き寄せられそのまま見つめてくる彼。

先程の鋭い表情から一変、今度は愛しい恋人を見つめる優しい目。

私はこの顔に弱い…そんな顔で見つめられたら何も言えなくなるし、彼もそれをわかってる。



「やっと大人しくなったか?」


「…ばーか」


「ah…その顔はまずい」


「?」


「止められなくなる」


「なっ!?ちょっと…!!」

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