変わりゆく者

第27話

時が経つのはあっという間だ。

事件と私の存在もすっかり世間から忘れ去られ、ニュースでも取り上げられなくなった。

人なんて所詮そんなもの…興味がないことは一瞬で頭の中から消去してしまう。

そして次から次へと新しい記憶が上書きされていく…



「ah… Painful…haha……」

( あぁ…痛ぇ… )



時刻は午前9時過ぎ…いつもより遅い朝の帰りを心配していた私は彼の帰宅にホッとした。

が、その安堵も一瞬で消えた……



「ちょっとそれ…!?」



クシャクシャになった髪にホコリまみれの洋服、体には無数の傷と火傷があった。



「あぁ、ちょっとな。大したことはない」



そう言いつつソファーに体を預けるも、やはりその表情は辛そうだった。



「大したことないわけないでしょ?今手当てするから…」



無理やり起こしベストとシャツを脱がすと、中からも痛々しい痣があらわになった。

いつもならこんなことないのに…



「You're gentle.」

( 優しいなぁお前は )


「ふざけてる場合?こっちはどれだけ心配したと思ってるのよ?」


「……Sorry」


「ねぇ誰にやられたの?まさか警察…?」


「それよりもっとタチの悪い連中だ…聞かないほうがいい」


「何よそれ……」


「まぁ聞け、俺はお前を巻き込みたくない。もちろん、手を汚すようなこともさせたくない…もしお前の身に何かあったら?想像しただけで俺は絶えられない。だからお前には、あぁ何だその…アレだ、一般人のままでいてほしい」


「一般人…?」


「あぁそうだ。警察は未だにお前の行方を追ってる…これは自分の身を守るためでもある。わかったらさっさと始めろ」


「…はいはい、やればいいんでしょ?やれば」



多めに消毒を付けてやると、案の定少し痛そうな表情を見せた。



「……さっきからわざとやってるのか?」


「そうだけど?」


「hun…適わないなぁ、honeyには」



傷や火傷はどれも痛々しいが、軽いものばかりで重症ではなさそうだ。

骨も折れてる様子はないし…とにかく無事に帰って来てくれてよかった。

時々夜に家を出て行ったと思えば朝には何もなかったような顔で戻って来る彼。

ここを留守にしてる間にしていることと言えば…一般人には理解出来ないようなこと。

例えば強盗してみたり、どこかの建物を爆破させてみたり……けど最近は様子がおかしい。

袖に血が付いていたりいつもより念入りにナイフの手入れをしたり。

それに普段はあまり使わないらしい銃まで持ち歩くようになった。

彼に一体なにが起きてるの?

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