第25話
「初めに言っておく、俺は金や宝石が欲しくて盗むんじゃあない。こんなものはどうでもいい」
「じゃあ…どうして?」
「盗むのが楽しいからだ」
そう言うと彼はポケットから取り出したマッチに火を付けそれを投げ捨てた。
目の前のお金と宝石に向かって…
「どうだ?こういうのも案外悪くはないだろ?」
「まさか…これがイルミネーション?」
「綺麗なのに変わりはない」
目の前でお金と宝石が燃えていくのを呆然と見ていた。
他に出来ることなんてないし、思い付かない。
ただ眺めていることしか出来なかった。
横目で彼を見ると、ポケットからホコリまみれの古いラジオを取り出しカチャカチャ触っていた。
「そんな古いのどうするの?」
「こういうのは雰囲気が大事だ。新しいのがいいってもんじゃない…あぁ、やっと付いたか」
ラジオから流れてきたのはなんとクラシック。
この状況でなぜクラシックなのかと疑問に思ったが、意外と悪くなかった。
「ロマンチックだろ?」
「…そうね」
私達は肩を並べこの幻想的な時間を過ごした。
私は自然と口を開いていた…昔のことや家族のこと…多分彼は全部知ってる。
けどちゃんと話を聞いてくれて…自分を知ってもらえてすごく嬉しかった。
「おいおい…目から何か出てるぞ」
「えっ?あっ……」
知らないうちに涙が溢れていた。
悲しくて泣いているのか…それとも嬉しくて泣いているのか…どうしてなのかわからない。
わからないけど涙は止まらなかった。
「なんで泣いてるのかなっ?私」
彼は何も言わず抱きしめてくれた。
そして……
「幸せだからだ」
「私が?」
「あぁそうだ。そしてその幸せってやつは永遠に続く…」
「… Please don't get away from me.」
( …離れないでね )
「It's promised.」
( 約束してやる )
運命の出会いは人それぞれ違うものだ。
ただしそれはお互いに運命だと確信しない限り成立しない。
どちらか1人が運命だと言い張ってもピンとこないことだってある。
私の場合は彼が運命の人だった…ただそれだけ。
けど私は彼のことを何も知らない。
名前も今までどこで何をしていたのかも…聞いても全部秘密の一点張り。
それでもいいの……だって彼は運命の人なんだもの。
知らなくったって側にいてくれるし愛してくれる…それで十分よ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます