第23話

「どれにしようかな〜…」



夢のようなバスタイムを終えた私は洋服選びに悩んでいた。

以前から気になっていたものや新作まで…ありすぎて選べない。

こんなことなら入る前に選んでおくんだったなぁ…



「hun…これじゃあ一生決まらないなぁ」



中々戻って来ない私にしびれを切らした彼は、先程からタブレットを見ながらソファーの上でくつろいでいた。

なぜバスルームに置こうと思ったのかはわからない…



「お前に似合う物だけ集めたんだ…どれだっていい。そんなことよりどうだったぁ?風呂は。俺からのサプライズだ。女はそういうの好きだろ?…気に入ったか?」


「綺麗だったよ?すごく素敵。意外とロマンチストなんだね」


「お前といる時だけはな」


「そう…あっ、これにしよ」



パンツスタイルのリラックスしたロンパースにスタッズのパンプス、それに彼のコートと同じネイビーのジャケットに決め、見えない所でサッと着替えた。



「Wow… It's beautiful.」


「いいよお世辞は」


「正直に言っただけだ」


「…ならありがとう。さっきから何見てるの?」



タブレットを覗き込もうとすると、こっちに来いと言わんばかりに私を膝の上に引き寄せた。

見ていたのはどうやらニュース番組のようだ。



「気になるんだ?事件。それとも私の心配してくれてる?」


「どっちもだ。だがまだ警察のバカは何もつかめちゃいない。それと残念なお知らせだ」


「?」


「お前の写真が公開された」


「それだけは絶対にダメッ!!」



世間に顔なんてさらしたら私…あいつが見たら…!?

仕事で顔を出さない理由はそれも関係していた。

極力人との関わりや、取材といったメディア関係のものはこれまで避けてきた…それなのに…



「もう遅い。可哀想になぁ、顔をさらされた上に今度は容疑者扱いだ」


「…容疑者?」


「〇億奪ったのも殺しも全部お前の仕業になってる。中々やるなぁ」


「冗談じゃないわよっ!!なんで私がそんなことしないといけないのっ!?」


「殺しの手口が同じで、しかもお前は行方不明。これまでの犯行がバレそうになったから逃げた…警察はそう思ってる。おまけに、そのほうがあいつらにとって都合がいい。ここでお前と1連の事件を結びつければどうだ?なんの解決の糸口も見つからなかった事件が急展開!あとはお前を見つけるだけだ…取り調べなんてどうにでもなる」


「そんなっ……めちゃくちゃじゃない」


「そうだなぁ、しかしそれが警察だ」


「……ねぇ?」


「大丈夫だhoney、心配するな。殺しも金の件もやったのは俺だ。お前は何もしていない…堂々としてればいい」



心配症だなと彼は私にキスをした。

不安を和らげるための彼の優しさなのだろうか?

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