第14話
街は次第に賑やかになりピークを迎えた。
もう少し眺めていたいところだが、ここにずっといるわけにもいかず重たい腰を上げた。
足は鉛のように重たく、ブーツはすり減り今にもヒールが折れてしまいそうなほどだった。
それでも私は歩き続ける…行く宛てなんてない。
道が続く限りひたすら歩き続ける…ただそれだけ。
次第にイルミネーションも遠ざかり人通りも少なくなっていった。
また孤独の時間が始まる…今頃優翔はどうしてるだろう?
私のこと探してる?
連絡もとれなくて心配してるかな?
もし探しに来てくれたとして…私はどんな顔で会えばいいの?
また……一緒にいてくれる?
「無理か…」
取り返しのつかないことをしたのはわかってる。
ただ他に方法が思い付かなかった。
あの絶望感をもう二度と味わいたくない…あんな思いをするぐらいなら1人で生きていくほうがよっぽどマシ。
1人でいたほうが周りに怯えないで済むしね…あーあ、何がしたいんだろうなぁ私。
平和なあの頃に戻りたいの?
…違う。
ママとパパを殺して私の全てを狂わせたあの男を殺したいの?
…違う。
誰かに私という存在を知ってほしいの?
でも知ってもらってどうするの?
そういう目で見られるに決まってる。
それが怖いの?
そういう目で見られて軽蔑されるから?
その度にあの時のことを思い出すから?
……違う。
私はけっきょくなかったことにしたいんだ。
何もかも忘れて…でもそれができないっ…できないから苦しいの。
今まで何度も忘れようとしてきた。
けどその度にあの光景が、あの男の表情がフラッシュバックされる。
真っ赤に染まり変わり果てた家、真っ赤に染まったママとパパ、そして…私を見つけてニタッと笑う不気味な男。
全部……全部全部全部…はっきり覚えてるっ。
殺されたママが流していた涙が赤かったのもちゃんと……覚えてる。
……あの時ママと喧嘩なんかしなきゃよかった。
私がちゃんと謝っていれば…家を飛び出したりしなかったらもしかしたら…もしかしたら何か変わってたのかな?
「きゃっ!?あっ…!あぁ…嘘でしょ?」
追い打ちをかけているかのようにとうとうヒールが折れてしまった。
「はぁ…気に入ってたのにこれ。あーもうほんとバカ。何してんだろ私…ほんとバカみたい」
仕方なくブーツを脱いでまた歩き続けた。
歩く以外の選択肢はなかったし他に思い付かないからだ。
少し歩いた先に運良く噴水のある広場があった。
前に雑誌かなにかで見たことあるようなないような…そんな気がしたが今はどうでもよかった。
長い距離を歩きすぎたのと、さっきヒールが折れてしまった時に足を少し痛めてしまい一刻も早く休みたかった。
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