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第13話
冷たい風が体に突き刺さる…寒いという感情を忘れるぐらい、ただひたすら真っ直ぐ歩き続けた。
あれだけ明るかった空は次第に暗くなり、街中のイルミネーションが輝きだす。
それにつられるかのように恋人達は戯れはじめた…
クリスマス楽しみだね
今年はケーキどうしよっか?
プレゼントは何がいい?
そんな会話が至る所から聞こえた。
みんな楽しそうでいいな…うらやましい。
今年はケーキ手作りするって決めてたのに…ちょっとしたサプライズのつもりで色々計画してたけど、それももう全部無駄になっちゃった。
「何やってるんだろう…私」
こんな私とは対照的にイルミネーションの輝きはどんどん増していき、辺りはあっという間に色とりどりの光に包まれていった。
そろそろ限界を迎えた私は近くにあるベンチに腰を下ろした。
このままずっとここでイルミネーションを眺めているのも悪くないような気がしてきた。
あぁ…寒い。
コート着てくるんだった。
携帯も財布も置いてきちゃったし…ほんとバカだなぁ私。
「……これからどうしよう」
「お家に帰らないの?」
突然の声に驚きそちらに視線を向けると、小さな男の子が立っていた。
その子はアメやラムネなどたくさんのお菓子が入った袋と、両親に買ってもらったであろう綺麗にラッピングされたプレゼントを抱えていた。
「お家に帰らないとサンタさん来てくれないよ?」
「サンタさんか…もう何年も来てないよ」
「どうして?いい子にしてたらクリスマスにサンタさんが来るんだよ?お姉さんはいい子じゃないの?」
「お姉さんは……悪い子かなぁ。だからサンタさんは来ない。君はもう来たんだ」
「うんっ!」
「そっか…よかったじゃん。ちゃんと大事にするんだよ?」
「お姉さんは何ももらえないの?」
「そうだね」
「じゃあ…はいこれっ!僕からプレゼント!!」
男の子はお菓子の入った袋をあけ、ニコニコしながら1つのアメを私に差し出した。
サンタさんが来ない私がよっぽど可哀想に思えたのだろうか?
「…いいの?」
「サンタさんが来ない代わりに僕がお姉さんにプレゼントあげるね」
「……ありがとう。優しいのね」
「ママがね、人には優しくしないとダメだって…あっ、ママが迎えに来たからもう行くね。バイバイお姉さん!」
「うん、バイバイ」
男の子は母親の元へかけて行き、あっという間に人混みに紛れて見えなくなった。
私はもらったアメを口にした。
普段ならただのイチゴ味のアメとしか思わないのに、今日は特別甘くて美味しかった。
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