第10話

「どうした?何を考える必要がある?」


「あなた……」


「んん?」


「…あなた一体何なの?ストーカー?何のためにこんなっ…」


「 NONONONO…俺はストーカーなんかじゃない。あんな品のない奴らと一緒にされるなんてのはごめんだ」


「You're crazy.」

( あなたもイカれてるわ )


「Oh…That's sorry.( それは心外だなぁ )俺はべつにあんたに危害を加えてやろうなんてこれっぽっちも思っちゃいない。俺はただ…あぁ…ただあんたが欲しいだけだ」



私が……欲しい?



「俺のところに来い」


「なに言って……」



再び距離をつめる男。

そして頭から髪、そして頬へ冷たい手が伸びてくる。

抵抗するなら今しかない…なのに体が動かない…いや、動けない。

私はこの空気に完全に呑み込まれてしまった。

その瞳から逃れることなんてもう出来ない。

激しくうるさい動悸…そして、顔を私の横に寄せ次に出た言葉は……



「愛してるんだ」


「……っ!?」



ダメッ!受け入れちゃダメッ!!これ以上私を惑わせないでっ!!自分が自分じゃなくなっちゃう…!!



「……Don't approach!!!!」

( 近寄らないでっ!!!! )



これが今の私に出来る唯一の抵抗。

予想外の反応だったのだろう…男の目が一瞬大きく見開いたように見えたのを私は見逃さなかった。



「そう興奮するな…」


「お願いっ!もう…もう私に関わらないで。あなたがここに来たことも誰にも言わないし忘れる…だからっ…!だから早く出て行って」


「……本当にいいのか?それで」


「Get out early!」

( 出て行って! )


「……OK.( そうしよう )そのかわり、もしまた俺に会いたくなったらいつでも連絡してくれ。最後にもう一度言うが…あんたを受け入れられるのは俺だけだ。そのことを忘れるな」



コートのポケットから小さな白いカードを取り出しそれを私に握らせた。

しっかり受け取ったのを確認するとうっすら笑みを浮かべ、機嫌が良さそうに鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。

先程までの張り詰めた空気は嘘のように消え、何もなかったかのように静まり返った。

私は握っていた手をそっと広げ、クシャクシャになったカードを見つめた。

そこには男の連絡先ともう1つ、後ろに…



I love you,my honey



と、赤色で記されていた。

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