第7話
「……ロン」
「……ん」
「…シャロン?」
「んん…あれ…?優翔?」
私確か……あっ、そうだ。
仕事が終わってそのままソファーで寝ちゃったんだっけ?
…あれ?私いつの間にベッドに移動したんだろう?それに荷物と机の上も片付いてる。
「どうかした?」
「えっ!?うっ、ううん…なんでもない。それよりありがとね?なんか…色々してもらっちゃって。迎えに来てくれた刑事さん達にもちゃんと謝っといて」
「謝る?どうして?」
「だって今あの大事件で忙しいでしょ?それなのにこんな面倒なこと……」
「考えすぎ。警察官は市民の安全を守るのが仕事だから。だからシャロンはなにも気にしないで?」
「そう…なら…よかった」
「それよりご飯まだでしょ?ここの夕食より豪華じゃないけど…これよかったら食べて」
もうそんな時間なのかと時計を見ると、時刻はまもなく午前0時になろうとしていた。
「ごめんっ、私もしかしてずっと寝てた?」
「大丈夫、僕も今来たところ。着替えを取りに帰るついでに寄ったからあんまり長居はできないけど…」
「そうだったんだ…忙しいのにわざわざありがとね?ベッドまで運んでくれたうえに片付けまでしてもらって。事件解決したらその…また出かけよっか?お礼にご馳走する」
「なんのこと?シャロンずっとベッドで寝てたよ。荷物だって触ってないし……もしかして寝ぼけてる?」
「あー……そうかも」
「珍しいね」
てっきり優翔だと思ったんだけど…?ほんとに寝ぼけてるのかな?私…
寝る前の記憶を遡っている私をよそに優翔はクスクス笑っていた。
彼は本当に私が寝ぼけているのだろうと思っているようだが、やはり私には覚えがないのだ。
「そうだ、こっちに来てから変わったこととかない?」
「えっ!?あっ、うん…特になにも。電話ももうかかってきてないし…平気」
「ならよかった。このままなにも起きなかったらいいんだけど」
「そうだね…」
「そんな不安そうな顔しないで。何があっても守るから…じゃあ、そろそろ行かないと」
「…わかった。優翔…無理はしないようにね?」
「ありがとう、今度ご馳走してくれるの楽しみにしてる。じゃあ…行ってきます」
「うん…行ってらっしゃい」
彼はいつも通り行ってきますのキスをして部屋を出た。
私はしばらく彼の後ろ姿を見つめ、誰もいなくなった部屋を見つめる…。
いつから感じるようになったのだろう?この何とも言えないモヤモヤした空気。
別に気まづいとかそういうものではない。
ただ…上手く表現できないけど…胸を締め付けられるような?キュッとなるような?そんな変な気分だ。
もちろん食欲も出るはずもなく、優翔からもらった差し入れをそっと冷蔵庫に閉まった。
嫌なことがあった日やモヤモヤした日にはシャワーを浴びて全てを洗い流すとスッキリする…
前に誰かから聞いた言葉。
確かに何もかもがリセットされるような…そんな不思議な気分になる。
私はひたすらシャワーを浴び続けた。
今晩はいつもより熱めの温度にセットして……。
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