第4話

ガチャ…



「ごめん、急に無理言って」


「いいよ。あれでしょ?その…聞き込みってやつ」


「ちょうどこの辺りでやることになったんだ」


「そうなんだ…はいこれ、薔薇はドライフラワーになってるけど大丈夫?」


「…どうして捨てずに?」


「どうしてって……」


「普通気味が悪いからすぐに捨てる…だからどうしてかなぁって」


「それは……可哀想だから」


「可哀想?」


「そう、可哀想…花に罪はないでしょ?だから取っておいたの…悪い?」


「…いや」


「…そんなことより捜査に戻ったほうがいいんじゃない?早く市民を安心させてよね」


「……わかった。じゃあ、もしこれから何かあったらすぐに連絡するって約束して?」


「わかった」


「ありがとう。寂しい思いばかりさせてごめん。シャロンの顔が見られてよかった。じゃあ…そろそろ行くね」


「気を付けてね」


「好きだよシャロン」



彼は私にキスをして部屋を出た。

嬉しいはずの恋人のキスは、私の胸を締めつけた。

愛せないのに裏切れない。

もうどうすればいいのか自分でもわからない。

わからないから考えるのも嫌。

けっきょくいつも逃げてる。

逃げて逃げて…何から逃げてるの?

優翔?過去?それとも現実?



「誰か教えて…」



ベッドに倒れ込んだその時携帯の着信音がなった。

この電話によって私の運命が変わってしまうなんて想像できなかったし思ってもいなかった。



\ ♪♪ /



「はい?」


「……」


「もしもし…?」



普通に出ちゃったけど誰からだろう?

ずーっと何も言わないし間違い電話とか?



「あの…」


「やっぱりちゃんと話せるんだなぁ、日本語」


「えっ?」


「ハーフなんだろ?念の為英語にしたんだが…まぁいい」



声の主は聞き覚えのない男の声だった。

どこか乱暴な…そんな印象だ。




「あの…会ったことある方ならすいません。その…どなたですか?」


「これから会うんだ、謝る必要はない」


「さっきから何を…?番号間違えてません?」


「いいや、この番号で間違いない。あんたシャロンだろ?」


「そう…ですけど…」


「ほーらやっぱり」


「……?」


「まぁ不思議に思うのも無理はない。こうして電話してるのもただの気まぐれだ」


「気まぐれ…?」


「あんたの声が聞きたくなった」


「私の……?」


「あぁそうだ。他に誰がいる?」


「あの…あなた一体…さっきから本当に何言ってるの?」


「あぁ…そうだな…hello beautiful young lady」


「!?」



驚きのあまり携帯を手放してしまった。

…無理はない。

なぜなら声の主は毎日薔薇とメッセージカードを私のポストに入れている超本人なのだから。

恐る恐る携帯を手に取るも、既に電話は切られていた。

これから会うって言ってた…部屋も知られてるしどうしよう…とにかく優翔に連絡しないと!

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