第2話
「やっと着いた」
マンションの明かりが見えるといつもホッとする。
ここまで帰って来れたらもう安心……
「じゃないか…」
1ヶ月ほど前からだろうか?
私の部屋番号のポストに奇妙な郵便物?が入れられるようになったのは。
郵便物と言ってもちゃんと梱包されているわけではない。
ただポストの中に白のメッセージカードと1輪の赤い薔薇が入れられているのだ。
たった1輪の薔薇は丁寧にラッピングされ、メッセージカードはいつも同じ言葉で
hello
beautiful young lady
と、赤い文字で書かれている。
最初は誰かのイタズラかもしくは彼女にサプライズでもしようと思ったけど間違えて私のポストに入れてしまったかのどちらかだと思った。
…が、今も尚毎日続いている。
当初は彼に話てみたものの無視しておけばそのうちなくなるよって他人事みたいに…
「ほんと……誰なんだろう?」
カードと薔薇を眺めながら部屋に戻った。
本来なら捨てるべきなんだろうけど、私はそれができなかった。
カードはタンスの引き出しにしまい、薔薇はドライフラワーにして飾ったりお風呂に浮かべたりもした。
白とグレーの殺風景な部屋によく目を凝らすと赤が所々に混ざっている。
「今日で40本目ぐらいか…」
一体これはいつまで続くのか…誰が何のためにこんなことするのか…考えても考えてもわからない。
今言えることは恐らく明日も薔薇とメッセージカードはポストに入っているということだけ。
…一応彼にも報告しよう。
さすがに心配?はしてくれるよね?
最近あんまり連絡くれないし忙しいのかな?
それとも……薄々そんな気はしてたけどね。
向こうからアプローチしてきたくせに…別れてって言っても将来君と結婚したいからとか何とか。
「矛盾してる」
毎日薔薇とメッセージカードくれるこの人のほうがよっぽどいい男だったりして。
……男かどうかわかんないけどね。
あーあ、私の人生何なんだろうなー。
あの日の夜から人生終わってるのかもね。
“1週間前、都内の銀行から現金○億が盗まれた事件ですが、昨日未明犯人グループの一味と思われる男性の遺体が見つかりました。”
あったなぁそんな事件。
犯人も見つかってなくてかなり大騒ぎになってたっけ?
“遺体が見つかったのは○○都○○区……”
「怖っ、すぐそこじゃん!?」
報道関係者とかいっぱい来るんだろうな。
明日…って言っても今日か。
朝のニュース番組で中継されてたりして。
“警察は犯人グループの拠点が近くにあるとみて捜査を進めていくとのことです。近隣住民の皆さんは夜の外出を控えるなどして十分に注意してくだい。次のニュースです……“
注意してくださいって…犯人の顔もわかんないのにどうやって注意すんのよ。
私は薔薇とメッセージカードのことなんかすっかり忘れ深夜2時過ぎ、ようやく眠りについた。
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