第2話

「お疲れ様でしたドクター。今日もあなたに助けられましたっ。いつもありがとうございます」


「べつに俺1人が患者を救ったわけじゃない。現地の優秀なスタッフのおかげだ」




国を越えた2人の医者の固い握手に、その場にいたスタッフ達は温かい拍手を送った。

解散後は基地としている医療用キャンプに各々で向かい、ようやくそこで一休みが出来るのだ。

桐也も脱いだ白衣を片手に自身のキャンプに向かおうと足を進めていたその途中




「なんだ?お前も怪我してるのか?」




足元の瓦礫の上に1羽の “青いアゲハ蝶” が横たわっているのを見つけた。

パタパタさせている羽の動きは弱々しく、どうやら飛べずに困っているようだ。




「今までよく踏まれずに済んだな?」




桐也はその蝶を優しく手の平にのせると、再びキャンプへ向かい足を進めた。

彼には人も動物も虫も関係ない…

“傷付いている命” が目の前にあれば、ただ純粋にそれを助けてやりたいと思っているだけなのだ。




「ドクター!」


「よぉ、怪我の具合いはどうだ?」


「ドクターのおかげでほらっ、もうこの通り!」




その子は以前左足に大怪我を負った女の子。

桐也のおかげで一命も取りとめたが、もう少し発見が遅ければ左足を切断していたかもしれなかったようだ…

ゆっくりではあるが懸命に左足を動かす姿に、桐也の顔には自然と笑みがこぼれた。




「ねぇドクター、その蝶々どうしたの?」


「ん?あぁ、飛べなくて困ってるところを見つけたんだ」


「怪我してるの?治る?」


「俺が診るんだ、治るに決まってる」


「ならよかった!そうだっ、ドクター知ってる?青いアゲハ蝶は “幸せを呼ぶ” って言われてるの」


「そうなのか?」


「うん!だからドクターにもきっと良い事があるかもねっ?」


「だといいけどな?」




その後女の子と別れ、桐也は休む間もなく蝶の手当てを開始した。

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