#3.知り合った記念日

第4話

付き合っていれば

付き合った記念日があるが



私たちは付き合っていない



どんな関係?と

聞かれても返事に困る



だけど女子は

記念日が大好きだから...



知り合った記念日を

私が勝手に作った



彼はいつ私と知り合ったのか

たぶん覚えていない



いや



絶対に覚えていない



だけど...



「え?覚えてないの?」



「私は覚えてるのに...」



「ひどい」



私がいじけると

LINEのトークを遡って

記念日を自慢げに教えてくれる



覚えてなかったくせに



でも



うん

可愛い......



なんなんだろこの可愛さは



年下なんて

いままで1度も興味がなかった



年上で優しくて

包容力があって

大人の余裕がある人



それがずっと私のタイプだった



逆を言えば

年下というだけで

恋愛対象としてみてこなかった



だからすごく彼との関係に

新鮮さを感じて

私はどんどん夢中になった



彼は電話の時必ず

「ちゅーして」と言ってくる



「ちゅーは会ってするんだよ?」

「会いにきてよ」と言いつつやんわり断る



「えーー」

「けち」



すねながらもそれ以上求めない彼



このやりとりを

彼と初めて電話した

数日後からずっとしている



私たちにとっては

もはや挨拶のようなもの



めげずに毎日言ってくる彼は



よくいえば根気強く



悪くいえばしつこい



..........................なんて言えない



「あかり」

「ベロちょうだい」



ちゅーを飛び越して

ベロを要求してくる彼に

あまりの恥ずかしさから無言になる



彼は数秒間の無言に耐えきれず



「はぁ?無視!?」



と怒りはじめる



26歳は

電話でこんなことをするの!?



恥ずかしながら

35歳の私は未経験...



もちろん「できないよ...」と答える



また怒る彼...



「だって」

「私には刺激が強すぎる」

「もっと会話のレベルを下げてほしい...」



「えー?」

「じゃあ、好きな食べ物は?」



想定外の質問に

思わず笑ってしまう



急に中学生の会話みたい



そこがまた可愛くてにやけちゃう





***************





彼と知り合って1ヶ月が近くなる頃



私は彼に記念日のことを話した



「ねぇーねぇー」

「もうすぐ記念日だよ」

「知ってた?」

「1ヶ月ってあっという間だね」



彼はここぞとばかりに

そのことに便乗して

1ヶ月記念には

絶対ちゅーしようと誘ってくる



余計なことを言ってしまったと

頭で理解した時には手遅れだったが



どれだけしつこく言われても

どれだけ怒られても



9歳年下の彼は

無敵の可愛さしかない



そして彼と関係を築いていくうちに

9歳差という壁を意識しなくなり



ただ単に

彼が可愛いに変わっていく



私は年下だから

彼を好きになったわけじゃない



哉斗だから好きになった



年齢は関係ない



それからは

彼を1人の男性として

みるようになった



彼と知り合って1ヶ月

本当にあっという間だった



恋人でもない彼と

朝から晩までのLINEと電話



「こえききてぇ」

「ずっとそばにいて」

「あいしてる」



この1ヶ月で彼が言ってくれた言葉



どれも嬉しくて

どれも忘れたくない



私の宝物



これが疑似恋愛なのか



本物の恋愛なのか



いまだにわからない



でも絶対に失いたくない



それだけは確実に言える



旦那にバレたくなくて



トーク履歴を定期的に消していた私は



次第に消す間隔が長くなり



彼との思い出を忘れたくなくて



消すことをやめてしまう...



“あんなに

哉斗トーク履歴を消すように

釘を刺されていたのにね“



“ちゃんと守っていればよかったよね“



“ごめんね“



彼の言うことを

聞けなかった私は


取り返しのつかない

状況になるなんて



この時は知るはずもなかった




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