#2.恋愛ゲーム
第3話
彼と知り合って数日
私たちの関係は
すでに縮まり始めていた
いつからだろう
お互いに好きと言いはじめる
好きだよって言われるたびに
好きだよって言うたびに
私は本当に
彼が好きだと錯覚しはじめる
錯覚...
その言葉が正しいのかわからない
好きという言葉は
今の私にとっては
実際の世界では存在しないような言葉
私は彼に現実逃避しているのかな
そうかもしれない...
朝のおはようから
夜のおやすみまで
ずっと続くLINE
その中で急に
恋愛ゲームのようなものがはじまる
「はじめまして」
「さとしです」
はじめは戸惑う私も
だんだんとこの会話に慣れてくる
さとしという人物は彼が作った架空の存在
「はじめまして」
「あかりです」
「哉斗なんかより俺とLINEしようよ」
「んーでも、哉斗怒るから」
「俺の方が面白くてお金あって最高だよ」
「えー、そうなの?うける」
「哉斗は今ほかの女と一緒だよ」
「え?最低...」
「ね?あんなやつやめなよ」
「じゃあ、さとしくんとLINEしようかな」
さとしくんに落ちた瞬間、
このゲームは終わる......
だって彼は
束縛と嫉妬が激しいから
なんなら妄想も...笑
他の男の話をすれば
すぐに機嫌を悪くする
LINEの返事が遅ければ
「男といるんだろ?」と探られる
だから他の男と
LINEがしたいなんて
絶対言ってはいけない
「そんなにさとしがいいの?」
「あんなやつクズだよ?」
私は彼にしか興味がないことぐらい
彼もわかっているはずなのに
必死に私から
さとしを離そうとするところが
私の心をくすぐり
愛おしく思ってしまう
“彼には敵わないや...“
本当にそう思う
「はじめまして」
「れなです」
私も同じことをしてみる
私とはまったく非対称の設定
えっちだいすき
おっぱい大きい
細くて
かわいい
男ならきっとこんな子大好きでしょ?
そして彼は簡単に釣られる......
「れな可愛い」
「すき」
「LINEして?」
「え.....あ、はい!?」
架空の設定とわかっていても
なんか傷つく
なんかむかつく
さとしの時はすぐすねるくせに...
れなの時はこんな簡単に釣られるんだ
私がいないところでも
彼はこんな感じなのかな?
「もう哉斗なんてしらないっ!!」
「あかり」
「こっちおいで」
「はやく」
いじけた私を
彼は子供を扱うようになだめる
これがいわゆる
イチャイチャなのか?
絶対誰にも言えない
恥ずかしすぎる...
それでも
そんなことをしながら
私たちは距離を
また少し縮めていった
恋愛ゲームは
楽しかった思い出の1つ
“哉斗、まだ覚えているかな?“
恋愛ゲームは
しばらく私たちの中でハマり
急にはじまっては急に終わり
またいつもの私たちに戻っていく
“本当に彼氏だったらいいのにな......“
考えても仕方ないのに
無理だってわかってるのに
だけど彼が欲しくて
頭から離れなくなる
平常心を保って
割り切ってる大人の女を演じたいのに
“なんだか虚しい...“
泣きたくなる気持ちを抑えて
私はいつも以上に
家族たちに明るく振る舞った
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