第6話 去るなら道連れ


「大賢者の称号を持つギルとはいえ、さすがに王族から苦情が来た場合にはいろいろとまずいかもしれぬから気をつけるのじゃぞ」


「悪いが王族だからといって他の生徒と区別する気はない。本当に最悪の場合は俺がクビになるくらいか。まあ、それはそれでまた魔術の研究に戻れるからいいんだけれどな」


「……まったくギルらしいのじゃ。じゃが、お主をこの学園に入れるには結構苦労したのじゃから、もうちょっとは頑張ってくれ」


「まあ、例の借りもあることだし、できるだけ頑張るさ。最悪の場合は腐りきった教師と生徒を道連れにしてクビになるから安心しろ」


「これっぽっちも安心できないのじゃが……」


 とりあえずクビになるとしても多少の猶予はあるだろう。その間にできる限りの学園の膿を排除して道連れにしてやるぜ。

 

「まあ、第3王女様の悪い噂はあまり聞かぬから大丈夫だとは思うがのう……。問題はそれ以外の生徒の素行がよくないらしいのじゃ。妾も業務が忙しくて、まだ生徒たちのことをそこまで見られておらぬからのう」


「新参の学園長様は大変だねえ~確か侯爵家の長男もいるんだっけ。まあ、侯爵本人じゃなくその子息なら多少は無茶しても大丈夫か」


「うむ、一度ああいった子供は痛い目を見た方が良いのじゃ。このままあの者たちが成長して人の上に立ってもロクなことにならぬ。周りの者からもてはやされ、権力を使うことだけを覚えても本人たちのためにも良くはないのじゃ」


「ああ、その通りだ。ふ~ん、アノンも意外と教師に向いてそうだな」


「一応この学園の学園長なのじゃがな……」


 こいつとも長い付き合いだが、なんだかんだでいい教師になりそうだ。アノンのやつも現場にでればいいのに。


 まあ、この少女の姿じゃあ生徒になめられることが容易に想像つくけれどな。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「さて、それじゃあ今日の授業を始めるぞ」


 臨時教師生活2日目。まずは昨日初めての授業をしたBクラスからだ。そのあと1時限挟んでからSクラスの初めての授業となる。


「ふむ、ちゃんと全員が揃っているようで感心したぞ」


 意外なことに昨日あれだけ情けなく演習場から出ていったゲイルとハザンとクネルの3人も出席していた。正直なところこの3人はサボると思っていたのだが、何やらニヤニヤと俺の方を見ている。


 ああ、昨日の件で親に泣きついて、苦情を出して俺が大人しくなると思っているのかもしれないな。


「今日は座学だ。前回説明していなかったけれど、俺の授業では1回ごとに座学と実戦演習を繰り返していく。どちらも魔術による身を守る術と対魔物および対人戦の実戦に役立つ内容を教えるつもりだ。それ以外の魔術に関連した質問も受け付けるから、発言をする際は手を挙げてから質問するように」


「……ギーク先生、よろしいでしょうか?」


「どうぞ、シリル」


 早速赤みがかったロングヘアのシリルが背筋をピンと張って手を挙げる。貴族の娘ということもあるだろうけれど、こいつは姿勢も綺麗だな。


「昨日の模擬戦で先生が魔術の戦闘にとても優れているのはよく分かりましたが、魔術に関連した質問というのはどんな属性の魔術でもということですか? 他にも魔道具や魔術薬学に関連した質問も可能ということでしょうか?」


「ああ、言葉の通りだぞ。というか、ぶっちゃけると俺は研究者だから、実戦魔術よりもそっちの方が本職だ。まあ、防衛魔術以外の質問は授業外で質問してくれると助かるがな」


「「「………………」」」


 空いている教師枠が防衛魔術だったが、正直に言えば普通の魔術の授業をしたかったところだ。まあ、それだと深く語り過ぎてしまう可能性がある。研究者という者は常に得意なものを語りたいものなのだよ。


「……ふんっ。嘘を吐くな、クソ臨時教師が!」


「ですよねえ、ザイル様!」


「引っ込め、臨時教師!」


 クソガキどもが騒ぎ出す。俺が苦情を受けて黙るとでも思っているのだろう。


「おい、クソガキ。さっきも言ったが、発言をする際には挙手をしろ。それと何度も言っているが、俺のことは先生と呼べ。でないとお前もずっとクソガキ呼びのままだぞ」


「っく、言わせておけば貴様! ライトニン――がっ!?」


「「ゲイル様!?」」


 クソガキが雷の魔術を発動させようとしたところで、俺の投擲したチョークがクソガキの脳天に直撃する。


「どれだけ喧嘩っ早いんだよ……焦らなくても次回の授業は実戦演習だからその時にしろ。あと、俺相手だから許すが、他の生徒に危険な魔術を撃ったら即停学か退学だからな」


「き、貴様! カーライル伯爵家の俺様に――ぐっ!?」


「いい加減に他の生徒の邪魔になるから、話をするなら後にしろ。この授業が終わったら1限分空いているからその時に聞いてやる」


 再びチョークがクソガキの脳天にヒットする。


「お、おい。これは体罰だろ!」


「てめえ、絶対にクビにしてやるからな!」


「たかがチョークをぶつけただけだろうが。本当の体罰ってのはな、こういうことを言うんだ」


 パチンッ


「ひっ!?」


 風の魔術を用いて箱に入っていた20近くのチョークを弾丸のように高速で撃ち出し、3人の顔の前で寸止めする。3人はまったく反応すらできていない。


 俺が本気の速度でぶつけていたら、こいつらの顔が消し飛んでいただろう。さすがにこいつらもそれが分かったようで、青い顔をしながらようやく静かになった。




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異世界転生して大賢者となった元教師、臨時教師となって崩壊した魔術学園を救う~邪魔する問題児&無能教師&モンスターペアレンツは徹底的に排除する~ タジリユウ@カクヨムコン8・9特別賞 @iwasetaku0613

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