第1章:一週間フレンズ

(1)

「ところでさ、ここの学校の名前って、何で『第5』なんだ?」

 そんな事を言ったのは、「魔法学園」のイメージに合わない……さわやか系のイケメンだけど、やたらとガタイがいい奴だった。他の生徒より頭1つ分ぐらい背が高くて……あと、筋肉量もかなり有る。髪型もスポーツ系の部活の奴みたいな五分刈り。

 入学式の前日、学生寮で上級生による新入生歓迎会が行なわれる事になり、僕達は「第4習学寮」って名前の男子寮の1階の食堂に集まっていた。

「あ……ボク、小学校の頃に北関東に住んでたけど、向こうでは公立高校の名前で『ナニナニ第○高校』なんて、良く有った気がするんだけど」

 そう言ったのは、学園祭の出し物でハリー・ポッターをっても違和感が無い、小柄な眼鏡の奴。

「それでも変じゃね? 今、国立の魔法学園って、いくつ有る?」

「え……えっと、たしか4つ」

「なのに、何で、ここ『第5』なんだ?」

「さぁ……」

「あと、ここより1つ前に広島に作られたのが、確か『第9』だった筈じゃなかったっけ?」

 更に変な事も有る。

 新入生は、ざっと3クラス分。男子は、大体、その半分。

 この男子寮は、4人部屋が2階から6階までに、ざっと二〇個づつ。

 そして、この学園は3年制。

 計算が合わない。

 ここだけで、全学年の全男子を収容出来るのに……寮の名前が何で「第4」なんだ?

 そして、そろそろ、新入生歓迎会の開始時間になり……。

 えっ……? 何?

 ゾロゾロと上級生が入って来た。

 ざっと……二〇人ぐらいだ。

 約6〜7割が妙に痩せてる。

 ほぼ全員が妙に顔色が悪い。

 目が死んでるような感じの人か……不良ヤンキーか何かかって感じの妙に顔付きがヤバめの人達が多い。

 そんなのが……何て言うか、軍隊チックな感じのここの制服を着てるので……。

 多分、新入生はみんな思った筈だ。

 ホグワーツのスリザリンだって、ここに比べれば天国だ……温厚で善良な常識人の集団だ……って。

「貴様ら〜ッ‼」

 上級生の代表格らしい人が、金切り声で叫んだ。

「歓迎会が始まる前に、俺達の許可も無しに、料理や飲み物を飲み食いした奴は、正直に前に出ろ〜ッ‼」

 え……?

 そんなトラップ、有りなの?

 ゴオ……っ。

 次の瞬間、上級生達の体から……ドス黒いオーラみたいな何かが立ち上るのが見えた。

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