第35話


いつから、だっただろう。




こんなにも、大切な存在を、何よりも憎らしく思うようになったのは。




「っっ、はぁ、はぁ、」



慌てて帰って来た自宅前。




夏の夜とは言え、蒸し暑く、汗が背中を伝った。




「ふぅ、」



額の汗を拭い、荒れた息を調える。




そっと静かに鍵を開け、そのまま家の中に入り、真っ先に向かうのは2人の所。




「……、海人、架弥。」



愛おしくて、憎い存在である家族が、布団の中で眠っていた。



自分の葛藤など、何も知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

闇夜の華 肆 @m69y

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ