第3話
テルセウスが出産して半年が経過した頃合い。
「クラウダルク、挨拶をしなさい」
屋敷へと訪れるアルトメリア。
彼女の傍には、小さな子供が居た。
彼女の髪質とは似ても似つかぬ銀髪。
目の色や表情は何処かアルトメリアの幼少期の面影がある。
「久し振りね、クラウダルク」
アルトメリアの娘であるクラウダルクである。
黄金獅子ネメアの血筋を持つアルトメリアは幻獣系の魔物との交配を可能とする。
その為、彼女、クラウダルクを受胎する為に、遠征で垣間見た伝説の魔物であるカオス・ヘル・ウルフと対峙、これによりアルトメリアは魔物の精液を採取した後に自らに注入、結果として懐妊をしたのだ。
アルトメリアとカオス・ヘル・ウルフの血を持つが故に、彼女の髪は灰色に近い光沢を帯びた髪であり、輝かしい鈍色の銀を放っている。
アルトメリアにも似て、クラウダルクの顔は容姿端麗である事が分かった。
「おひさし、ぶい、じょおーさまっ」
きちんと挨拶をするクラウダルク。
女児を目の当たりにして、柔和な笑みを浮かべたシャルリュテは、自らの腕で眠るテルセウスを彼女の前に座らせた。
「この子の名前はテルセウス、私の大切な愛しい子、仲良くしてあげてね」
シャルリュテはクラウダルクを近しい友の様な関係にしようとした。
次第に成長すれば、テルセウスが男であると言う異質さを他者は受け入れる事が出来るとは限らない。
最初から、歳が近く、他のアマゾネスと交流をしていない幼い時期を狙い、アルトメリアが出産したクラウダルクを近づけたのだ。
「クラウダルク、テルセウス様だ、我らの大切な王である、敬意を以て接するのだ」
そうアルトメリアはクラウダルクに言うが、まだ幼い彼女にはどの様な意味であるのかはまだ理解出来ない。
しかし、テルセウスが前のめりになってクラウダルクに近付くと、彼女の胸に頭を押し付けた。
クラウダルクはテルセウスに押し倒される様になったが、両手でテルセウスを抱き留めて、彼に怪我が無い様に動いていた。
「まあ、この子、テルセウスが傷つかない様に、抱き締めたわ、偉いわクラウダルク、貴方は、テルセウスの第一の騎士に相応しいかも知れないわ」
そう言った。
シャルリュテにとってのアルトメリアであるように、だ。
親子二代に渡って主従関係が続く事をアルトメリアは想像する。
(私とクラウダルクが、シャルリュテとテルセウス様に…これは何と素晴らしい忠義だろうか…クラウダルク、お前もそれを望んでいるのか?)
クラウダルクはテルセウスを抱き締めてぬいぐるみの様に接している。
アルトメリアは、クラウダルクを必ず、テルセウスの傍に置ける様な騎士にさせる事をこの場で誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます