ついに配信を始めた
第16話 入学配信直前のおはなし
前書き
思ったより試験勉強が忙しくて書きだめすら作れませんでした...
事前に申告していた予定を最初から守らず申し訳ないです...
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4月1日。今日は社会では年度が変わり、また新たな社会人が生まれて...一部は後悔するだろう。それはさておき、こちらはついに入学配信、つまりデビューするのである。去年とは違い、今年からの僕はもう安泰...なはずである。
今僕を始めとした5期生はそれぞれが本社の配信専用の部屋にいる。僕の出番は最後なのでまだ時間があるのだが、日々谷さんがもうスタンバイしている中でひとり別のところで過ごすのも違うと思ったので同じ緊張感の中に身を晒している。
配信は17時から始まり4時間を予定している。現在は16時、開始1時間前である。先ほど全ての部屋の3D関係の機器の最終確認が終わったので日々谷さんはもう準備万端である。
まだ僕の順番ではない、それどころか最後だというのに緊張がおさまらない。が、ヒナに少しでも近づくと決めた今、こんなところで緊張していてはだめに決まっている。
「ん?」
と、その時、自分の携帯から着信音が鳴った。確認してみると、画面には「日々谷まな」の文字が。
「日々谷さん...?何かあったのかな?」
配信直前に電話とは、何かあったのだろうか。そう思い電話に出る。
「もしもし、岬です」
『せ、せんせー?その、どうしよう...ふ、不安で緊張が取れなくて...声の震えも取れない...』
電話に出て返ってきた彼女の声は、普段の明るく元気な様子からは想像もできないような震えた声だった。てっきり彼女は緊張とは無縁の存在だと勝手に思っていたのだがどうやら違うようだ。
「うーん...じゃあいつも僕がやってる落ち着く方法...というよりかは再確認の方法を教えるよ」
『さ、再確認...?』
「そう、再確認。緊張するなりしてしまうってことは自分の目的がこれからの不安感で覆われてしまって見失ってしまってるということ。だから、一度深呼吸して自分のやりたいことを考えてみて」
『............やりたいこと、かぁ...』
そして10秒ほどの沈黙のあと。
『うん!せんせー、ありがとう!目標のためにはこんなところで怖気ついていたらだめだよね!絶対に成功させてみせる!』
「そりゃよかった。頑張れ、応援してるよ」
『せんせーも頑張って』
その言葉を最後に電話は切れる。どうやら緊張は完全に吹っ飛んだようだ。
「...また...?」
日々谷さんとの通話を終えてすぐに電話がかかってきた。今度はエレナさんである。
「もしもし?岬です」
『に、兄様!私頑張るので、応援しててくださいね!できるだけ早く色んなゲームのコラボしましょうね!』
「そうだね。頑張れ」
どうやら緊張は完全になくなったわけではないが、それよりもやりたいことへの意欲が強いようだ。この様子なら大丈夫だと判断したので、そのまま通話を終える。
どうせならこのまま塩見さんにもかけようかと思ったが、まるでやってることがカウンセラーと何ひとつ相違なかったので、やっぱりやめようと自分の予定を再確認することにしたが、着信音が鳴った。
「...って、ヒナじゃん......」
拒否する理由などないのでそのまま通話に出る。
「もしもし、岬です」
『もしもーし、日奈でーす!さーくんは緊張でガッチガチに凍ってないかな〜?』
そんなに緊張はしていない。むしろいつもの彼女の調子が緊張などどうでもよくしてしまった。
「今の言葉で緊張なんか吹き飛んだから大丈夫。というかさっきから緊張ほぐす側だったから...」
『あら?ふふ、じゃあ何の問題もなかったんだね。......コラボ、楽しみにしてるからね!頑張って!』
「ありがとう、ヒナ」
通話を終えた僕は、今度はもう誰も通話がかかってこないことを確認したのち、これからの配信の予定を整理する。4人の新たな学生が誕生するまであと30分を切っていた。
◇
19時。すでに配信が始まって2時間が経った。僕以外の5期生の配信はもう終わり、残るは僕のみである。
「......さて、いくか」
深呼吸をして、配信開始のボタンを押す。
「こんばんは。バーチャル研究開発所からきました。夜桜美咲と申します」
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