第3話 全裸ならパスタも折れる

 前回までのあらすじ!


 冒険者になるための試験を受けようとしたら、謎の三人組に絡まれた!


「何だお前らは!」


 フルカがそう言うと、三人組のうちの一人が答えた。


「悪いけど『魂技』すら知らないような奴に冒険者になってほしくないんでね!邪魔させてもらうよ!」


「別にギルドではそういうこと気にしませんけど・・・・・・冒険者なんてそんな格式高いものでもないですし・・・・・・」


「受付の人はこう言ってるけど?」


「あーあー、聞こえない聞こえなーい」


「うわあ都合の悪いことには耳を塞ぐタイプの人だ」


「とにかくお前は私ら新人潰しグループが潰してやる!」


 急なこの騒動に、荒っぽい周りの冒険者たちは「お、喧嘩か!?」「やれやれー!」などと囃し立てるのみで止めに入ろうなどという輩はいない。


「ちょっと!あんなこと言ってますけど止めなくていいんですか!?」


 ルリがそう受付嬢へ訴えるが無情にもこう返された。


「ギルドではこういう時、止めに入らないことになっております」


「何で!?」


「そっちの方が面白そうなので」


「もうちょいもっともらしいこと言って取り繕えよ!!」


 ルリと受付嬢のそんなやり取りをよそに、フルカはその三人組と対峙していた。


「売られた喧嘩は買うぜ?しかし・・・・・・」


 と、フルカはそこで言葉を切り、その三人組をまじまじと見た。


 三人組は全員女性で、主にフルカと話しているのはコックの格好をした女性、もう一人は眼鏡をかけて小脇に本を抱えた女性。


 そしてその二人の一歩後ろに下がって腕組みをしている、黒髪ポニーテールで、赤い目をした、左手が義手のイケメン美女・・・・・・。


「何これ?どういう三人組?」


 と、そこで受付から戻ってきたルリがこう言った。


「あれ?よく見たら姉さんたちじゃないですか」


「え?」


 意外にも三人の中の一人の黒髪ポニーテール美女がこのルリの姉だったことが判明した。


「ちなみに姉さんはもう冒険者引退してて、あの二人は姉さんの教え子みたいな感じなんですよ」


「へえ・・・・・・」


 さて、意外な事実も判明したところで、決闘の時間だオラァ!


「ふん、全裸野郎めが!『魂技』とはなんたるかをその身に叩き込んでやる!」


 そう言って謎にコックの格好をしたやつがフルカに向かって何かを投げてきた。


「うおっ、あぶねっ!・・・・・・何だこれ?」


「ふふふ、気になるか?それはな・・・・・・」


「それは?」


「パスタだ!」


「は?」


「パスタだ!」


「・・・・・・は?」


「パスタだ!私の魂技は『ダイヤモンドパスタ』!その名前の通りパスタをダイヤモンドの硬さにすることができるのだ!」


「・・・・・・何だその能力!?」


「はははは!ダイヤモンドの硬度を持つパスタにその身を貫かれて死ねぇーッ!」


 そう言って彼女はパスタを投げてきた。無数のパスタがフルカの身へと迫る。


 その場にいる誰もが、これは避けられないだろうと思った────しかし。


「よっと」


 ダダダダダダ・・・・・・


「何い!?」


 フルカは自分の身に迫ったパスタを全て受け止めたのだ。


 そしてそのパスタを集めて一つの束にすると、それをそのまま────


「ふん!」


 バキッ


「あっ!?」


 折った。


「・・・・・・折った!?」


「ああ、折ったぞ。完膚なきまでにな」


 ※折れたパスタは後でスタッフが美味しく頂きました。


「ダイヤモンドの硬さのパスタを・・・・・・何でそんなことが出来るんだ貴様!?」


 たまらずそう問いかけるパスタ投げ少女。その問いかけにもちろん、フルカはこう答えた。


「それはな・・・・・・全裸だからだ!」


「・・・・・・え?何?え?」


「全裸だからだ!全裸だからできたんだ!」


「・・・・・・???」


 パスタ投げ少女は、この理解を絶した人間に、言い知れぬ戦慄を覚えた。


「・・・・・・くっそなんかまずい、なんかまずい!姐さん!なんかこいつやべえです!ここは撤退しましょう!」


 パスタ投げ少女のその言葉を聞いたルリの姉もこれを聞いて頷いた。


「私もそう思う。今回は撤退しよう」


「よしてったーい!てったーい!・・・・・・今回はここで退くが。憶えとけよ!次会う時がお前をボンゴレビアンコにする時だ!」


「えー、私ナポリタンがいいなー」


「じゃあナポリタンだ!憶えとけ!」


 スタコラサッサと逃げていく三人組。


 ルリは姉の背に向けてこう問いかけた。


「姉さーん、今日の夕飯何がいいですか?」


 ルリの姉はくるりと振り向きこう言った。


「ペペロンチーノで頼む」


「あれ見て食べたくなったんだ、ペペロンチーノ・・・・・・」


 ◇


 さて、冒険者になるための試験はそこまで苦戦することもなく、あっさりと合格に終わった。


 筆記試験なんかはもうほとんど心理テストみたいなものだったので、これも何事もなく終わった。これが計算とか戦術のテストとかだったらいくら全裸でも詰んでただろうから、良かった。


 そもそも冒険者ギルドというのは、他の職業に就けなくてあぶれたような奴らに対する救済組織みたいな側面もあったりするので、受付嬢も言った通り、そこまで敷居が高いわけではない。


 ということで、晴れて合格となったフルカは、これから冒険者になる人に向けての講座に参加していた。


 どうやら今日登録に来たのはフルカだけのようで、広い教室に一人だけ座っていた。


 やがて、教室のドアを開けて、先生となる先輩の冒険者が入ってきた。


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