第三十三話
「無駄!無駄!無駄ぁ!」
蒼月が超能力で発現させた砂のカーテンの一番近くに居たプレイヤーはM16A2を構えて、全面に乱射する。
一点を狙っていないのは蒼月に一発でも弾が当たるようにと考えた結果だ。
「能力で砂を消すからどけっ!」
別のプレイヤーが声を掛けると銃を乱射していた男が退く。
その後すぐに砂のカーテンを横一線に風で切り裂き、砂のカーテンを消滅させる。
「ははは、アイツ消えちまったよ!お前の風で消滅させたんじゃねぇか!」
構えていたM16A2を下ろして、砂のカーテンがあった場所を見ながら笑う。
直後、男性プレイヤーの体が真っ二つに引き裂かれる。
「これ
蒼月は
「はや・・・」
蒼月の速度に反応も出来ていない風使いに蹴りを入れて体勢を崩す。
「お、おい!お前達たった一人相手に何を手こずってる!早くそいつを殺せぇぇぇ!」
指揮を取っていた偉そうなプレイヤーが叫び周りに指示を飛ばすが、誰も蒼月に銃撃をしようとはしない。
「そいつを殺した奴にボーナスを出す!100万だ!100万を現金で振り込んでやる!」
偉そうなプレイヤーが他のプレイヤーに対し、喚き散らす。
「100万・・・」
金額を聞いて呟いたプレイヤーがハンドガンを構えてトリガーを引く。
蒼月の頭を狙ったその弾丸は、風を纏っている蒼月の手前で軌道が少しズレてそのまま後ろの木に当たる。
蒼月が着弾地点を確認すると木がパチパチと燃え始めていた。
「
銃撃してきたプレイヤーに向かって電撃を放つと近くにいた他のプレイヤー達にも連鎖する。
「なるほど、そこらへんに居るわけね」
連鎖して確認出来たプレイヤーの位置に
仲間があっという間にやられていき、やけくそになって銃を撃ちながら突撃してくるプレイヤーには
「ハハハハ!お前らこんなもんかよ!もっと!もっと、楽しもうぜ!」
火の手が上がり燃え上がる木を背景に蒼月は高笑いをする。
生き残ったプレイヤーは蒼月の圧倒的な強さを見て尻尾を巻いて逃げていく。
「お、お前達!逃げるな!200万でどうだ!こいつを殺せぇぇぇ!」
偉そうなプレイヤーが逃げるプレイヤーに向かって叫ぶが誰も聞く耳を持たない。
「お仲間に逃げられたな」
蒼月がゆっくりと偉そうなプレイヤーに近づいていく。
「待てっ!わかった!僕と手を組もう!君がいれば2回戦は硬い!僕が2回戦に行ければ500万円を君に振り込もう!どうだ?悪い条件じゃないだろ?」
偉そうな男は蒼月に提案をするが、蒼月は
「なら1000万!1000万だぞ?どうだ?なんの取り柄もない庶民が1000万をパッと手に入れることなんて出来ないだろ?これはお前にとってもチャンスなんだよ!」
男の言葉を聞いて蒼月は
「1000万か、確かに俺がそんな大金を手にしてるとこなんて想像出来ないな」
「そうだろ?悪い話じゃないだろ?あの使えない役立たずどもを簡単に倒したんだ。力はもう見せてもらった。君なら僕のボディガードに相応しい!」
蒼月の脳内に無機質な女性の声が響く。
「それに君を僕のパパの会社に斡旋してもいい!君のあの動きを見て直感したよ。Abyss Gate Online部門の配信者としてもやっていける!」
男はペラペラと良い言葉ばかりを並べて蒼月の気を引く。
蒼月はニヤリと笑う。
この男が何をするつもりなのかはわからないが、これは明らかな時間稼ぎだ。
「なぁ。
蒼月の言葉に男は体をビクリと震わせる。
「し、知らないな。そ、それは今の取引に何か関係あるのかな?」
「いや、なんとなく聞いてみただけだ」
男は焦る。
心が読まれているのか。
何故自分の超能力がバレたのか。
これから何をするのかすでに分かっているのか。
こいつの超能力はなんなのか。
男は思考するが、答えは出てこない。
一撃で蒼月を仕留める為に蒼月の遥か頭上で光を操作し、一点に集中している。
そして出来上がったビームのようなもので蒼月を焼き尽くし、この不利な状況を打破しようと考えていた。
「よし、なら僕たちはもう仲間だ。握手をしようじゃないか」
光子砲の準備が整った。
握手をして隙を見せた時に光子砲を喰らわせたら終わる。
自分にもダメージがあるだろうが、丸薬で回復すれば済む話だと男はほくそ笑む。
「いや、仲間になるなんて一言も言ってないだろ」
蒼月は握手を拒む。
だが、男はニヤリと笑った。
それなら好都合だ。
自分はダメージを喰らわずにこいつを葬れる。
「そうか。なら交渉決裂だぁぁぁぁぁぁぁぁ!死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」
男は叫ぶと同時に頭上から落ちてきた巨大な岩に潰されてポリゴン化する。
「俺が
蒼月は巨大な岩を尻目に、燃え盛る木々の間を駆けて森を抜け出す。
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