第三十一話
男性プレイヤーの様子を木の上からドラグノフSVDを構え、スコープ越しに確認する女性プレイヤー。
攻撃手段が無いものだと思っていた。
一方的な狩りなのだと錯覚していたのだが、自分がもしもここで外せば狩られる。
この緊迫感に女性は飲まれそうになる。
深呼吸して、気持ちを落ち着かせてからトリガーに指を掛ける。
この男は宙を走って湖を横断してきた。
私の狙撃に当たらないようにランダムに動いて。
だが、ランダムに動いているようで相手も人間。
ある程度動きにパターンがあることはここまで宙を走ってきている間に把握している。
本人も認識出来ないレベルの仕草。
男が首をほんの一瞬だけ、右へ向けた時がこいつの最後だ。
女はその仕草が出るのを気配を消して待つ。
そして、ついにその時が訪れる。
男がほんの一瞬だけ右へ向ける仕草が出た。
女はニヤリと笑い勝ったと確信した。
装飾品サイキックオーブを装備していて、自身の超能力
ある程度狙いをつけて撃ってから
ドラグノフSVDのトリガーを引く。
咄嗟に男は頭部を守るように火の玉を自身の頭の周りに発現させた。
それになんの意味があるのかはわからない。
だが、何をしても無駄。
女が放った弾丸が火の玉に当たると火の玉は爆発し、頭部を覆っていた全ての火の玉が連鎖的に爆発する。
「
女は思わず声を上げる。
男はその状態で私がいる方へ正確に
「あいつ何なのよ!」
女は
男も自分の
ドラグノフSVDの先についている銃剣を突き立てれば倒せる。
後一歩で勝利。
そこで女はバランスを崩す。
地面が柔らかくなっていて、踏ん張りが効かなかったのだ。
女性が地面の方へ視線を移す、地面には落とし穴が出来ており、それに落ちていたのだ。
いつの間に?
自分がきた時には無かった。
そもそもこいつの超能力は?
空中を歩くだけで無く、電撃、
見たものは全て系統の違うもの。
応用でどうにかなるレベルではない。
女性は色々な思考が頭の中を巡る。
一瞬では有ったが思考を辞めて、男の方へ視線を戻すと蒼月の掌が女性の顔の前に構えられていた。
「じゃあな、三流スナイパー」
女は咄嗟に目を瞑る。
最後に覚えているのは、
女はポリゴン化し消滅。
バトルロイヤルエリアからイベントエリアに強制転移される。
蒼月が右上に表示されている残り生存数を見る。
残り2387人
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!危なかったぁぁぁぁぁ!」
蒼月は倒した女性プレイヤーがドロップした回復の丸薬を拾い、体力が全快するまで使用する。
「最後に
蒼月がその場から離れようとした時、脳内にあの無機質な女性の声が響く。
直後、蒼月より大きな岩が蒼月めがけて飛んでくる。
蒼月は全力で走り出し、その場から距離をとる。
振り返り元いた場所を見ると、岩が地面にめり込んでいた。
「あぶねぇぇぇぇ」
蒼月は周囲を警戒する。
「いやぁ、今の避けるかぁ。いけた思ってんけどなぁ」
声のする方へ蒼月が視線を移すと、糸目の白い髪を無造作に束ねた男性が立っていた。
「不意打ちする割に声かけてくるとか何考えてんだ?」
蒼月は糸目の男を睨む。
「おぉ、こわ。そんな睨まんでええって。ちょい話そうや。君だけやで今ので生き残ったの」
男は本心では無いだろうが怖がる素振りをする。
「話す?バトルロイヤル中にか?」
蒼月は臨戦体制を解くのを辞めない。
「そうやで。こんな時じゃないと超能力メインで戦ってる人と関わることなんてないやろ?ほんまなかなかおらんねん」
糸目の男は両手を蒼月に見せて戦う意志は無いと示す。
「僕な、シンリ言うねん。自分は?」
「・・・。」
相手は
蒼月はシンリの出方を伺う。
「はぁ・・・。信用ないなぁ。わかった。ほなこれでどうや?」
シンリは両手のサイキックリングを外し、蒼月の近くに放り投げる。
そして自身のステータスを蒼月の方へ見せる。
蒼月は目の前に出されたシンリのステータスを確認する。
シンリ
Lv30
HP 700/700
【VIT 5】
【STR 5】
【DEX 8】
【AGI 5】
【LUK 35 + 30】
【PSY 123】
装備
頭 【無し】
体 【実験兵の服】
右手 【無し】
左手 【無し】
靴 【実験兵のブーツ】
装飾品
【幸運の指輪】
【幸運の指輪】
【幸運の指輪】
超能力
「確かに攻撃手段はないみたいだな。けど、少しでも不審な動きしたらやるからな」
蒼月は構えを解く。
「ようやく信用してくれたかぁ。それでかまへんよ」
シンリはその場に座る。
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