第三十話
その後も音に釣られて何人ものプレイヤーが現れては全員綺麗に落とし穴に嵌っていく。
「こんなやり方卑怯だろ!」
「そうよ!そうよ!」
落とし穴に嵌った男女ペアが蒼月を非難する。
蒼月はこの二人を覚えていた。
ゲーム開始時、
させてくれたと言っても蒼月が一方的に
「おぉ、なんかお前たちのこと覚えてるぞ!
蒼月が女性の方を確認するがサイキックリングをつけている様子はない。
「あれ?でもサイキックリング装備してない?」
女性の手にはしっかりとM4カービンが握られていた。
「
女性はサイキックリングをプリセットに登録すらしていないようだ。
もしも
「ふーん。そうなんだ」
蒼月は口が半月状になるくらい笑いながら電撃を手に纏う。
「ひっ!何するつもりよ!」
女性は怯えた表情で蒼月を見る。
「えっ?決まってるじゃん。君の超能力の凄さ教えてやるよ」
蒼月が全力の電撃を女性に浴びせると女性に当たった後、近くにいる男性の方にも電撃が連鎖する。
「これは君が使ってた超能力と同じ、
カップルプレイヤーはもがいてもがかなくても自身のHPが減っていくのをただ見ているだけしか出来ない。
「ははは!どうだ?銃なんかより超能力のが強えだろ!」
蒼月は高笑いしながら、二人をポリゴン化させる。
「あぁ!超能力って最高だぁぁぁぁぁぁ!」
蒼月は何も考えずに心のままに叫ぶ。
「あっ、やば。そろそろここ移動しないとやばそうだな」
蒼月は直感した。
この場所は潮時だと。
蒼月はそそくさと落とし穴を作っていたエリアから場所を移動する。
蒼月が森の中をなるべく気配を消して移動する。
数分移動したところで開けた場所に出る。
一面に広がる湖。
水に反射する太陽の光で、眩しさすら感じる。
蒼月は眩しさを緩和させる為に右手を顔の前に出して反射する光を遮る。
その時、ダンッと破裂音がして蒼月は半歩後ろに押し出される。
「痛っ!」
痛覚設定を低レベルながら有りに設定していたので、蒼月は肩辺りに痛みを感じる。
「くそっ、撃たれた」
次弾が放たれる前に蒼月は高いAGIを利用して、その場から離れて木の裏に隠れる。
体力を確認すると20/700となっていてほぼ瀕死の状態だ。
「危ねぇ・・・」
現実で見ることはそうそう出来ない綺麗な湖を前に、蒼月は気を抜いてしまっていたのだ。
蒼月は回復丸薬を体力が全回復するまで使用する。
「一発でこの高威力。アサルトライフルでは無くスナイパーライフルだろ。何処から撃たれたのか全くわからなかった」
蒼月が思考している間にダンッともう一度銃声が響く。
「射線からは外れている筈だから俺を狙ってる訳ないよな」
蒼月が言葉を言い終わった直後、蒼月の目の前を弾丸が通るのを感じた。
弾丸の速度的に見えたわけではない。
ただ明らかに何かが通った風を感じたのだ。
「はっ?」
蒼月は咄嗟に立ち上がり、全力で湖の方へ走り出す。
スナイパーライフル相手に遮蔽物のない場所で姿を見せるのは、愚の骨頂だと分かっている。
だが、明らかに弾道がおかしいのだ。
初めは遮蔽物の無い湖で、何処からかはわからないが前面から撃たれていた。
二発目は蒼月の目の前を掠っていった。
狙撃手が蒼月が隠れた場所の真横に移動していないとそんな弾道は不可能だ。
だが、真横に来れるほどの時間はなかった。
ボルトアクションでリロードする程度の時間。
いや、それよりも短かったかもしれない。
相手が瞬間移動などの高速で移動できる能力者の可能性もあるが、それなら移動後に顔を狙い外すわけがない。
近くに移動してきたなら俺の
だから瞬間移動や高速移動等の能力では無いと推測する。
高いAGIを利用して動き回っていれば、狙いを定めるのも難しいだろうという魂胆で、遮蔽物の無い湖側に走り出したのだ。
遮蔽物が無い方が蒼月自身も全速力で走れるから好都合。
湖の外周を全速力で走っているとダンッとまた銃声がする。
蒼月は音を聞きおおよその場所を推測する。
「あの辺ってことは俺が隠れた木の真横じゃない」
高速移動や瞬間移動の能力では無いと確信する。
「きっと初めもあの辺りから撃ってきた。つまり一発目を撃った後、俺を倒したいという気持ちが出てきて場所移動してないんだ」
蒼月は高笑いする。
「覚悟しろよ。三流スナイパー」
蒼月はニヤリと笑い、高いAGIで右左にランダムで動きながら、スナイパーを翻弄し音がした辺りを走って目指す。
その間もダンッ、ダンッと何度か銃撃が聞こえたが
「音が近づいてる。ははは。今頃スナイパーは当たらないことに苛立ちを覚えているだろうな」
蒼月は体を翻し、なるべく複雑な動きをしながら銃声がした方へ近づいていく。
「それにスコープ越しなら俺が銃を装備していないことが分かっているから近づかれても怖くないと思っている筈。俺はすでに
蒼月はスナイパーがいるであろう場所にたどり着いた。
この湖に来る際に通ってきた森から繋がっている森だ。
わざわざ遮蔽物の無い湖の外周を通ってきたのは、スナイパーを挑発する意味もある。
「さーて、何処に居るかな。」
気配を消して、確実に狙える時を伺っているのだろう。
風のせいか布が擦れるような音すらしない。
動くのを止めることなく電撃を右手に纏いスナイパーを探す。
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