第二十九話

ブワッと視界が変わり、蒼月の眼前には古い寺のようなものが見える。


「寺か?とりあえず中を確認して、丸薬だけでも回収しよう」

蒼月は寺の方へ移動し、箪笥や木の箱等を物色すると弾丸やらのアイテムが入っている。


「おっ!丸薬みっけ」

蒼月が丸薬を回収した直後に、左上に表示されていた生存数が16,000から15,999へ変わる。


「これ、誰か倒されたってことだよな。ってかそんなにいるのかよ!上位30人とか無理ゲーだろ!」

蒼月は寺の入り口付近から外の様子を伺う。


「誰もいない。ここから離れるか?銃だと木の扉なんて貫通するだろ。けどマップがわからないから下手に動き回らない方が安定か?」

寺の全貌を確認するために蒼月が寺から出る。

唯一の出口である石階段の方へ移動すると、石階段を登って寺の方へ向かってくる男性プレイヤーを発見する。

プレイヤーに気付いた蒼月は、急いで寺の方へ戻る。


「やばっ、バレたか・・・?」

蒼月は電撃を右手に纏わせ、いつでも電撃を撃てるように構えて寺の入り口の陰から外を監視し続ける。


登ってきたプレイヤーはこちらに気付いていたそぶりは無い。

服装がはっきりとわかるくらいに近くまで来た。


軍服を着た男。

サイキックリングでは無く、AK-47を装備している。


石階段を登ってきて、銃を構えてキョロキョロと寺に背を向けながら移動してくる。

寺の中より、石階段側を警戒しているようだ。


「まだだ。慌てるな。もう少し引き付けろ」

蒼月は深呼吸をして呼吸を整える。


男性プレイヤーが蒼月の射程圏内に入った瞬間、蒼月は電撃と破裂炎球ブラストボールを放つ。

電撃と破裂炎球ブラストボールは見事、男に命中。


「くそっ、くらっちまった」

男性は咄嗟に寺の方へ銃を構えて、後退りしながら攻撃が飛んできた方へ銃を乱射する。


「ははは、俺がどこにいるかわかってないんだ!」

蒼月はニヤリと笑い、破裂炎球ブラストボールでは無く攻撃速度の速い電撃を放つ。


「電気だぁ?超能力かよ!」

男がトリガーを引いても、弾丸が出なくなる。


男は石階段に隣接する森の方へ移動し、姿を隠そうとするが蒼月も甘くない。

リロードをする必要があるのだと分かり、蒼月は寺から飛び出す。


「くそっ、今のタイミングで!」

男はプリセットに入っている装備に入れ替えるかリロードをするか咄嗟に判断が出来ず、蒼月の破裂炎球ブラストボールに晒されてポリゴン化して消滅する。


「よっしゃあ!」

蒼月は男が消滅した場所まで移動し、回復丸薬を拾う。

音を聞きつけた漁夫が来ない間にその場を後にする。

その後、蒼月の予想通り破裂炎球ブラストボールの音を聞いた人が寺に集まり、大乱闘が行われる。


蒼月は移動した先の森で少し休憩をする。

ここまで出会ったのは寺で会ったあの一名だけだ。

右上の生存数を確認すると後1万人を切った。


「早いな。やっぱり人数が多いからその分出会う確率も高いんだ」

蒼月は森の中を音を立てずに移動する。


砂操作サンドキネシス模倣コピーしました。


蒼月は咄嗟のことに声を出しそうになるが、口を手で押さえる。


「今・・・?イベント中でも超能力の模倣コピー発動するのかよ」

小声でツッコミを入れて、辺りを見渡すとズズズと何かが動く音聞こえる。


「この音か?」

音がする付近で人影を発見する。


「ククク、ここに人がハマれば最後。蟻地獄のように砂に飲み込まれて体力がなくなるまで蝕む」

貴族のような綺麗なスーツの丸メガネをかけた男がニヤニヤと落とし穴を作っている。


「なるほどね。砂操作サンドキネシスってそんなことが出来るのか。ただ今回は相手が悪かったかもな」

蒼月が透視クレヤボヤンスで辺りを見渡すと男の周りに複数個落とし穴が発生していた。


「場所は把握した」

蒼月は空中歩行エアウォークを発動し、男に無音で近づく。

男は落とし穴を作ることに必死になっており、蒼月に全く見向きもしない。


破裂炎球ブラストボールをスーツを着た男にありったけ打ち込む。

初弾が男にぶつかり破裂炎球ブラストボールが爆発する。


「なんだぁ!?」

後を振り向くと男の視界は破裂炎球ブラストボールで埋め尽くされていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

全ての破裂炎球ブラストボールが男に命中すると、男はポリゴン化して消滅する。


蒼月は透視クレヤボヤンスを発動して、辺りの落とし穴がどうなったかを確認すると、男が消滅したので綺麗さっぱりなくなっていた。


「なるほどね。倒されたら残らないのか。よーし、俺も練習のために落とし穴このへんに大量に作っとくか!」

見様見真似で蒼月は一帯に落とし穴を作って、破裂炎球ブラストボールの音を聞いた漁夫を嵌める作戦だ。

空中歩行エアウォークで木の上に移動し、誰かが来るのを待つ。


数秒後、音に釣られたプレイヤーが集まってくる。


「ははは、きた!きた!」

蒼月は嬉しそうに、プレイヤーの動きを観察する。


「この辺で音がしたはずなんだ・・・。ギャアアアア!」

綺麗に落とし穴にハマる。


「ははは、めちゃくちゃ綺麗にハマったな!」

蒼月は笑いながら空中歩行エアウォークで男の目の前に現れる。


「お前がやったのか!」

男は銃を構えようとするが、破裂炎球ブラストボールを一発放たれて銃が弾き飛ばされる。


「ごめんな。俺勝ちたいからさ」

蒼月の後ろには大量の破裂炎球ブラストボールが現れ、それを全て男に向かって放つ。


「やめてくれぇぇぇぇ!」

破裂炎球ブラストボールを全弾食らった男はポリゴン化して消滅する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る