第十話

翌日。

昨日は眠りが浅かったこともあり、今日は11時まで爆睡をかました。


「ははは!やってやったぜ!夏休み最高!」

ベッドから勢いよく起きあがり冷蔵庫の方へ移動し、エナジードリンクをとり出す。


「よいしょっと」

椅子に座り昨日コンビニで買ってきたパンとエナジードリンクを摂取する。


「ご馳走様!」

即座に立ち上がり、VRゴーグルをつけてベッドへ横になる。


「Welcome to Abyss Gate Online 」

無機質な女性オペレータの声が脳に響く。

ログインするとフレンドチャットに反応がある。


「蒼月様!おはようございます!」


「おはー」

モンブランとあまねだ。

二人ともインしてたようだ。


「おっはー、早いなー」と挨拶をする。


「早いってもうお昼前ですわよ?規則正しい生活しないとお肌が荒れてしまいますわ」


「寝坊助」


二者二様の返事が返ってくる。


こういうの楽しいなと思いながら何をするか考える。


「まぁまずは泥田坊からドロップしたETCを売りにいくか!」

蒼月は雑貨屋へと向かう。


「それにしてもすごいな。現実世界は11時だってのにゲーム内では夜なんだもんな。こりゃ感覚バグっちまうな」

なんて考えてながら歩いていると女性の悲鳴が聞こえる。


「おっ、街中で?なんだなんだ?」

蒼月が声のする方へ向かうと、路地裏から振袖袴姿のNPCが現れる。

そして蒼月に気付くと蒼月の方へ駆け寄ってくる。


「助けてください!」

NPCだが表情や話し方など、普通の人間と大差ない。


「どうしたー?」

蒼月が返事するとそれがトリガーとなったのだろう女性が話し始める。


「友達があやかしに攫われてしまったんです!あやかしは街の外にでて、南の方に進んで行きました。友達を助けてはもらえないでしょうか?」


蒼月の目の前にクエスト発生のポップアップが現れる。

当然Yesだ。


蒼月がYesをタッチしたら、女性NPCは笑顔になり「ありがとうございます!」と手を握ってくる。


「これはこれで悪くないな。」

蒼月は顔が少し緩むがすぐに元に戻す。


あやかしは南の方にある廃神社へ向かいました。よろしくお願いします。」

女性NPCは蒼月に頭を下げる。


「おう!任せとけ!」

蒼月は女性NPCに後ろ手に右手を振る。


「さーて!これはクエストってやつだろ?楽しくなってきた!」

蒼月はオウサカの街から出て南へすすんで廃神社を目指す。

元々の目的であった雑貨屋のことなど、とうに忘れていた。


道中餓鬼が現れたが、電撃と破裂炎球ブラストボールのコンボであっという間に蹴散らす。


「流石に最弱のあやかしはもう余裕だな!」

11レベルになってステータスが上がっているからだろうか、餓鬼を電撃含め5発で倒せるようになっていた。


「それにしても、超能力で戦っている人が少ない。むしろほとんどの人が銃をメイン武器にして戦っている。何故だ・・・?」

そんなことを考えていたら廃神社に到着した。

AGIにステータスを振っているおかげか本当に足が速い。


「現実世界でもこれくらい早く移動できたら良いんだけどなぁ」

蒼月はぼそっと呟く。


鳥居を潜り、廃神社に入るとモワッと廃神社が何かに囲まれる。


「なんだこれ?」

蒼月が出ようとすると何が阻むように蒼月を優しく跳ね返す。


「うわっ、マジかよ。閉じ込められた?」

試しに破裂炎球ブラストボールを打ち込むが何かに当たりバンと爆発を起こす。


「閉じ込められてるじゃん!最悪じゃん!」

だが出られなくなったものは仕方ない蒼月は右手に電気を纏う。

そして透視クレヤボヤンスを発動する。


模倣コピーでの使用だが透視クレヤボヤンスはそこまで不便を感じない。

もしかしたら透視できる距離が短くなっているかもしれないが、敵の居場所を先に知れるのはアドバンテージが大きい。


「さてと先に進みますか」


透視クレヤボヤンスのおかげで物陰に隠れている敵の居場所も分かり、奇襲を受けること無く奥に進むことができる。


「なんか拍子抜けだなぁ。餓鬼しか出て来ないし」

電撃と破裂炎球ブラストボールを使用できる蒼月には敵なしだった。

群れで現れたとて、破裂炎球ブラストボールあやかしに触れた瞬間小規模の爆発を起こすので、その周辺にいる餓鬼はノックバックする。

万が一漏れたとしても雷撃を喰らわせて、ささっと倒してしまう。

もはや作業と化していた。


敵を倒し続けて最奥らしき場所に到着する。


「ここが一番奥か?」

蒼月が透視クレヤボヤンスを使用しても扉の奥の様子を透視しようとしても何かに阻まれて見ることが出来ない。


「一番奥っぽいなぁ。それに神社だってんならここが本堂だろ?おそらく最奥だ」

蒼月は頬を叩く。


「やってやる!」

蒼月は気合いを入れて大きめの木の扉を両手で押すと、ギィィィィと音が響く。


中には非常に大きな鬼が片膝を立てて座っていた。


「よう、お前が人攫いか?」

蒼月は電気を右手に纏い構える。


鬼は蒼月の姿を確認するとゆっくり立ち上がる。

立ち上がった鬼は3メートルくらい有るだろうか。

かなり大きい。


「返事は無しっと。やる気満々じゃん」

蒼月は先手必勝と言わんばかりに電撃を鬼に放つ。

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