第十一話

鬼は蒼月が放った電撃から体を庇うように右腕で電撃を受ける。

攻撃を受けた鬼が咆哮をすると、建物が揺れる。


「うるせぇぇぇぇぇぇ! 」

蒼月は咆哮に怯まされること無く、破裂炎球ブラストボールを放つ。


鬼は雷撃の時と同じように右腕を前に出し、攻撃から身を守る。

バンと小規模の爆発を起こすがノックバックは起こらない。


「ボス扱いのあやかしはノックバックされないのか」

蒼月は鬼が何かをしてくる前に破裂炎球ブラストボールと電撃を何度も放つ。


ガァァァァァァァァ!!!

鬼は右腕で攻撃を受けながら突進してくる。


蒼月はAGIの高さを存分に発揮し、鬼の突進を躱す。


「なんだこんなもんかめちゃくちゃ遅いな!」

鬼を挑発するように蒼月は鬼の側面から顔に破裂炎球ブラストボールをぶつける。


その後も鬼は直線的な攻撃だけしかしてこない。

攻撃を放つと絶対に右腕で攻撃から体を庇う。


おかしい。

なんで右腕だけで攻撃を受ける・・・?

違和感は感じるが確実に鬼の頭上に表示されているHPは削れている。

開始から10分は経っただろうか、単調な突進攻撃しかしてこない。

HPのバーはあと9本。


鬼は咆哮をする。

先程とは明らかに雰囲気が違う。

だが、構えは突進攻撃と同じ。


蒼月は先程より余裕を持って、回避行動に移る。

鬼は蒼月に向かって突進してくるが途中で急停止し、蒼月の方を向き直しもう一度突進を繰り出す。


人の挙動とは明らかに違う。

最大速度から急停止その後直角に曲がってくるとは予想できるはずもない。

蒼月は鬼の巨体に押し出されて本堂の壁まで吹き飛ばされ、壁にぶつかる。

そのまま鬼は止まることなく壁に貼り付けになった蒼月に突進で追い討ちをする。


「ガハッ」

痛覚設定10でも鳩尾を殴られた位の痛みが蒼月を襲う。

蒼月は咄嗟にステータスを確認すると残り体力は10になっていた。


「痛ぇ。一撃でこんだけ食らったらそりゃ痛いよな」

蒼月はゆっくりと立ち上がり、アイテム欄にある丸薬を体力が全快するまで飲む。


「もう喰らわねぇ」

蒼月の目つきが変わる。

右手に電気を纏い、鬼との距離を考えて仕切り直す。


「かかってこいよ」

人差し指をクイッ動かして鬼を挑発する。


鬼も挑発されたことが理解したのか、咆哮して再度突進を行う。

蒼月が突進の軌道からいなくなったこと確認したら急停止し、蒼月の方へ軌道を修正。

一歩目から最大速度での突進。


だが蒼月はそれをものともせず、闘牛士のように紙一重で躱し、左手を鬼の突進の軌道にワンテンポ遅くまで残していた。

その左手で鬼の鳩尾辺りに破裂炎球ブラストボールを何度も叩き込む。

鬼はその攻撃に若干怯む。


「はははは!どうだ痛いだろ?さっきのお返しだ!!」

蒼月はその後も側面から電撃を頭部に向かって何度も放つ。

近接での攻撃は欲張りすぎない。

AGIの高さを使い、距離を取ることも忘れない。

離れた場所から右手と左手で破裂炎球ブラストボールを発現させ、鬼に向かって何度も撃ち込む。


そんなことを繰り返している内に鬼の体力はようやく半分位まできた。

破裂炎球ブラストボールと雷撃が本堂の中を飛び交う。


放った破裂炎球ブラストボールを鬼が右手で庇ったところ鬼の右手が千切れ吹き飛んだ。


「部位破壊もある訳ね」

蒼月は攻撃の手を止めずに、ゲームのクオリティに感心する。


吹き飛んだ腕を見て、鬼が今日一番の咆哮を繰り出す。

あまりの声の大きさに蒼月は咄嗟に耳を塞ぐ。


「な、なんだ??」

鬼はゆっくりと吹き飛んだ腕の方へ向かう。


「意味わかんねぇことしてんじゃねぇよ!」

破裂炎球ブラストボールを放つが、鬼が止まることはない。


吹き飛んだ腕の場所まで着くと鬼は左手で腕を拾い上げる。

拾い上げた腕は大きな骨の剣へと姿を変える。


鬼は突進の構えをすることなく蒼月に向かって走ってくる。

そして剣が届く範囲になると、蒼月に向かって骨の大剣を叩きつける。

AGIに振っていたからなんとか咄嗟に躱せたが、あんなの食らったら一発でお陀仏だ。


「なかなか面白いことするじゃん」

蒼月は電撃を纏わず、破裂炎球ブラストボールだけ発現させる。


だが、突進してきて近付いたら振り下ろすという単調な作業には変わらない。

突進の前動作は無くなったが、突進か剣か見極めさえできれば問題ない。


蒼月は着実に鬼のHPを削り、残り2ゲージ。

鬼のHPバーは色が変わり赤色になっていた。


鬼は途端に暴れ始める。

左手に持っている骨の大剣を使って本堂を攻撃し、本堂が崩壊し始める。

その後叫びながら蒼月の方へ駆け出し、剣をがむしゃらに振り回し蒼月を攻撃する。


「くそっ、挙動が読みにくいな」

パターンなどはなく上下左右ランダムな方向から大剣を振り回す。


AGIに振っているからか反応速度も早くなっているのだろうか。

それとも蒼月のアドレナリンが出て、躱わせているのかは分からないが蒼月はあれから一度も鬼の攻撃を受けていない。


蒼月は人間離れしたコントロールで鬼が振り回している大剣に向かって破裂炎球ブラストボールを放ち、全て命中させて少しだけ動作を遅延させている。


残り1ゲージになると同時に蒼月の破裂炎球ブラストボールが鬼が持っていた大剣を破壊する。


「さて、どうする?もうお得意の剣じゃ攻撃できないぜ」

蒼月が笑うと鬼は左手で蒼月を掴もうとする。


だが蒼月はそれすらも紙一重で躱し、破裂炎球ブラストボールを放ち顔面にぶつける。


蒼月は破裂炎球ブラストボールを顔面に当てた際の減り具合を確認する。


「オーケー。ここから最高のフィナーレだ」

蒼月は反撃主体の動きで自身から攻撃をすることはなかったが、攻勢に転じる。

AGIの高さを利用し、鬼に捕まることなく近距離から破裂炎球ブラストボールを確実に顔に当て続ける。


鬼は必死に左腕で蒼月を捕まえようとするが、蒼月が鬼に捕まることはない。


残りHPゲージ残り1割を切った。

鬼はようやく蒼月を左手で掴む。


そのまま蒼月を食おうと口を開く。

だが蒼月は焦った様子はない。


蒼月は両手を前に突き出しゼロ距離での破裂炎球ブラストボール連打。

蒼月も爆発の範囲内にいるのでダメージを少し喰らうが確実に仕留める為、この手段を取った。


そして鬼がポリゴン化し消滅する。


「終幕」

消滅した鬼はETCアイテムと大量の金をドロップする。

金を先にアイテム欄へ収納し、大きめのアイテムから先に広い確認する。


『茨木童子の骨』

切り落とされた右腕の骨。

人間は俺を卑怯者と呼ぶが、姑息な手を使う人間の方が卑怯者だ。


次に小さい方のアイテム。


『血吸い鬼の歯』

装飾品

装備中、敵を倒すごとにHPを回復する。


「うわっ、歯じゃん!気持ち悪っ!」

蒼月は咄嗟に歯を手から落とす。


落とした歯に近づき、歯と骨を拾いアイテム欄に入れる。


「なるほどね。茨木童子か聞いたことあるな。そりゃ強い訳だなー!」

蒼月は崩壊した本堂に寝転がると同時にこの世界全体にアナウンスが流れる。


『ワールドアナウンス』

先程、能力者1名によってボスが初討伐されました。

これにより装備屋で装飾品の販売を開始いたします。

また撃破した能力者には運営からプレゼントを用意しております。

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