お弁当箱 in バッグ?
愛彩
お弁当箱 in バッグ?
いつかの桜の季節のお話です。
当時、いいなと思っている男性がいました。
桜の季節です。
そうです、お花見の季節ですね。
彼は、多忙なお仕事をされている方でした。
お花見にお誘いしたい、
でも、お仕事も忙しいだろうなあ、と。
『桜の季節ですね。』
『お仕事終わりにでも、お花見に行けたら良いですね。』
なんて、口約束程度で終わっておりました。
時が経ち、急遽お花見に行くことに。
お仕事終わりに。夜桜ですね。
春も終わりかけで、桜の色がピンクから緑に変わりはじめていた時期でした。
彼は、車でお迎えに来てくれました。
わたしの装いを上から下までチェックして
『素敵だね。』と。
視線がバックのところで数秒間、止まった様な気がしました。
気のせいでしょうか。
黄色のスウェード生地のミニバッグです。
少し色を攻め過ぎたのかしら、と思いつつ車に乗り込みました。
お花見の会場へ到着。
二人で公園を一緒にお散歩しました。
短い時間でしたが、幸せな時間でした。
お花見が終わり、彼の車へ戻ります。
車に着いて、彼が開口一番に、
『あのさ...。お花見弁当は?』
『?』
『その小さなバッグの中に入っているの?』
『???』
『お花見弁当を作ってきてくれたんじゃあないのかい?』
『…』
確かに、メールで桜の話をしていた時、
『お花見弁当を楽しみにしているね。』
とは言われておりました。
まさか、お弁当の本予約だったとは。
わたしは、てっきり仮予約だとばかり。
『この小さいバッグの中に、お弁当が入っているとずっと思ってたんですか?』
『うん…。中々、出してくれないから。
いつ出してくれるのかなって思ってて。
流石に小さ過ぎるかなとも思ったんだ。』
わたしは、なんだか彼のことが愛おしくなってしまって。つい笑ってしまいました。
彼はお鼻も高く、プライドも高いお方でしたので、少しぷんすかしていました。
それもまた可愛らしいなあ、と。
『まあね、勝手に期待しちゃったのは僕の方だしね。僕だけが今日を楽しみにしてたってことかい?』
あの時、そしてその後も彼に伝えることはなかった秘密のお話。
急遽、決まったお花見の日には、バッグの中にお弁当箱は入っておりませんでした。
でもね、しっかりとメニューは考えていたんですよ。いろんなおかずをメモにびっしりと。その中で選抜メンバーのおかずには星印を付けて。
わたしだって凄く凄く、楽しみにしていたんですから。
今から冬が来て、また春がやってくるのでしょう。来年こそは大きなバッグの中に大きなお弁当箱を詰めてお花見に行けますように。
それでは。
お弁当箱 in バッグ? 愛彩 @omoshiroikao
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