第4話 面接って、そんなんじゃない!

 ラジオ局の2階、司会者の面接会場。

 廊下には20人ほどの面接希望者がすでに集まっており、皆ライバル同士だ。

場の雰囲気は静まり返っていた。

 幸太郎は周りをざっと見渡し、少し気が滅入った。20数人の中で、全員がイケメンや美女だった……自分を除いて。

 さらに、その全員が25歳から30歳の、業界経験者だったらしい……自分を除いて。

 幸太郎の唯一の強みは、彼が放送学科出身であることだった。彼は下野大学の放送学科を卒業しており、それ以外に何の強みも持っていなかった。卒業後のこの数ヶ月、すでに2、3社の放送局の面接を受けていたが、いずれも面接の段階で落とされていた。幸太郎はその理由をよく知っていた。それは彼が普通の外見であり、且つ業界経験がなかったからだ。

 「小泉正二くん。」

 「はい。」

 「入ってください。」

 最初の人が面接室に入っていき、すぐに5分ほどで終わって出てきた。

 「5番、木谷幸太郎くん。」

 女性の助手が履歴書を手にして幸太郎の名前を呼んだ。

 幸太郎は深呼吸をして立ち上がった。「緊張してない」と言うのは嘘になる。

 部屋に入ると、そこには7、8人の面接官が座っており、男女が入り混じり、皆が厳しい表情をしていた。

 幸太郎を見た面接官のうち、少なくとも2人が微かに眉をひそめたが、それが何に対して不満だったのかはわからなかった。

 幸太郎はお辞儀をして、事前に録音した朗読や資料を面接官に渡し、自分の席に戻り、自己紹介を始めた。

 「皆様こんにちは。木谷幸太郎と申します。今年23歳で、下野大学の放送学科を卒業し……」

 その時、中年の男性があからさまに苛立った様子で手元の書類を見下ろしながら言った。

 「履歴書はすでに見ているので、繰り返す必要はありません。」

 「筆記試験の成績は、まあ、なんとか合格ラインだな。」

 隣に座っていた中年の女性が彼と目を合わせ、目で合図を交わした。そして、冷たい口調で言いながら一枚の原稿を机に置いた。

 「面接は2つの問題だけ。まずは、この原稿をできるだけ早く覚えて、暗唱してください。」

 「暗唱?」

 それだけ?と幸太郎は思った。暗唱は得意ではないが、大学では一通り訓練を受けているし、基礎的なスキルとして身についている。大丈夫だろう。

 彼はすぐに席を立ち、原稿を手に取って読み始めた。大体1,000字ほどの長さだった。だが、幸太郎が自信を持って記憶を始めてから、わずか10秒が経ったところで、その中年の女性は手を伸ばし、幸太郎の手から原稿を引き取ってしまった。

 「え?まだ読んでいる最中なんですけど。」幸太郎は驚いて言った。

 「もう十分、始めてください。」

 他の面接官たちは特に反応も見せず、当然のように思っている様子だった。

 幸太郎は戸惑いながらも、「10秒しか経っていないじゃありませんか。これは約1,000字もあるんですよ……」と訴えた。

 すると、今度は中年の男性が苛立たしげに言った。「もし一日かけて覚えるなら、誰だってできるだろうが。」

 幸太郎はますます苛立ち、「でも、そんなの……」

 「覚えた分だけでいいから、早く始めろ。次の人も待っているんだから!」

 幸太郎は怒りをこらえ、暗唱を始めた。

 「営利を目的としない上演等…第三十八条公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆または観衆から料金を受けない場合には…」

 彼が覚えたのは、わずか10秒で読める程度の内容だった。

 面接官たちは淡々とメモを取り、紙に何かを書き込んでいた。

 「もういい、次の問題は聞かなくていい、次の人に進もう。」

 中年の男性が手を振ってそう言った。

 幸太郎は理解した。今回の面接も失敗に終わったと。

 納得がいかなかった。こんな不条理な面接があるか!

 面接室を出る際、背後から面接官たちの声が聞こえてきた。

 「今後、こんな見た目の人は面接しなくていい。時間の無駄だ。」

 その一言を聞いた瞬間、幸太郎は自分が部屋に入った瞬間から彼らに見限られていたことを理解した。だからこそ、誰もが絶対に答えられないような問題をわざと出してきたのだ!

 怒りに満ちた幸太郎は、ふと「セーブ」のことを思い出した。セーブしたのはちょうど30分前、まだセーブの有効範囲内だったのだ。

 彼はゲームリングの画面を開き、「ロード」のオプションを確認した後、覚悟を決めてボタンを押した。

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