三十話 神殺しは迷宮の中で 其の壱

 ジータがラビに無理矢理引き摺られて2時間程が経ち、バサラは迷宮ダンジョンへと向かう準備を進めていた。


 何故、バサラが動けるようになっているこかと言うとこうである。


***


「バサラ、お前動けなかったら話にならんからな! ちょっとだけズルさせてやるよ! 今回は俺に一撃当てた報酬だ!」


 ジークフリートはそう言いながら自分の腕の一部を軽く切り、血を流した。それに対してバサラはギョッとし、呆気に取られていると彼の体に垂らした。


「な、何するんだい?!」


 ベットで横たわっていたのに血を垂らされた瞬間、すぐに体を飛び上がらせるものの自分の体が動いたことに驚愕した。


「あ、あれ? さっきまで体動かすと全身の筋肉が悲鳴をあげてたのに?」


「俺の血は軽い治癒効果がある。まぁ、飲めばもっと効き目が良いんだが最悪人間を辞める場合があるからな」


 ジークフリートはむふんと腕を組み、嬉しそうにするもバサラは不思議そうに彼女にその正体を問いた。


「えーと、ジークフリートはさ、一体何者なんだい?」


 その問いにジークフリートは自信満々に答える。


「俺か? 俺は俺だ。それ以上でもそれ以外でもない。最強の剣聖ジークフリートだ!」


***


 バサラは鞄に必要なものだけを詰め込むとジークフリートに迷宮ダンジョンへと向かう地図をもらい、ジータの屋敷を後にした。


 そして、馬を借り、一人、王都から離れて行く。


(うーん、もしかして今回、僕めちゃくちゃ厄介事を引き受けた感じするな?!)


 そんなことを考えながら馬を走らせ、徐々に迷宮ダンジョンへと足を運んだ。途中、馬を適度に休ませながら自分も水を飲み、3時間ほどして迷宮ダンジョンの入り口に到着した。


 既に、夕方になっており、辺りが暗くなる一方で、入り口から発せられる異常なほどに黒く濁った氣をバサラは感じていた。


(ジークフリート、彼女自分の連れが一緒に入って死んだって言ってたのあれ嘘じゃないな。全員、死んでるなんて生ぬるいもんじゃない。漂ってる氣が死そのものじゃないか)


 入れば死地。踏み込まずに帰れるのであればどれほど良かったか。だが、ジータが期待してくれている、そんな事実がバサラを動かした。


 覚悟を決め、震える足を叩くと死薫る迷宮ダンジョンにバサラは踏み込んだ。


***


 迷宮ダンジョンラビュリントス第一階層


 辺りは灯火により道は照らされいるが最奥までは見えない。


 そんな中、バサラは巨大な岩石に追われていた。


 入った瞬間、補装されている様な気がする道があり、地面を踏むとかちりと音を立て、巨大な岩石が彼を目掛けて転がって来た。


「始まりから! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


 バキリバキリと音を立て、辺りを壊しながらバサラと巨大岩石は迷宮ダンジョン内を駆け巡る。


 道に沿って岩石は加速していくとバサラ目掛けて襲いかかった。


 始まりから波乱万丈。

 バサラの運命は如何に?

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