二十一話 とある四護聖の分析 其の肆
「まぁ、これはただの実験だ。ちょっと待っててくれ。今、武器を取り出す」
シンクはそういうと背後からどこからか杖の様なものを取り出した。明らかにシンクの背丈に合っていない大きさで、先には様々な装飾のなされた紫色の杖が現れた。それを見たバサラはギョッとすると彼は笑顔で再び口を開く。
「今、背丈に合ってない大きさの杖が出てきて笑ったろ」
「え?! いやいや、笑ってないよ。ちょっとびっくりしただけで」
「慣れてるから安心しろ、許さん。我、運命は魔導。鎮めるは予兆、握るは杖。共鳴器・
青い杖は主人の運命と共鳴し、彼の周りに雲のようなものを生んだ。手には先ほどよりも短くなった杖をシンクは握っていた。
雲は彼の周囲を浮遊しており、それらは主人の命令を待つようにその場に留まっている。
シンクの共鳴器・
シンクは自身の周囲に揺蕩う雲を集めるとつぶやいた。
「
白い雲は黒く染まり、矢のような形になると雷を纏い始めた。
一瞬にして、無数の矢を作り出し、それを確認したシンクはバサラへ向けて、振るうと雷を纏った雲の矢がバサラ目掛けて飛んでいく。
(矢一本一本にしっかりと氣が満ちてて、攻撃力は十分。一本も避けさせるつもりがないって意思を感じる。魔導の運命ってことは、何かを生み出したり、作り出したりするのが得意。でも、一瞬でこの量を作れるのは、やっぱり、すごいな! シンクは!)
バサラはかつての愛弟子の成長を喜び、
飛んでくる矢に対して剣を振り下ろすとそれら全て吹き飛ばす。
(やっぱり、あの腕力、いまだに健在か。あの数の矢を一瞬で振り壊せるのは何故だ? 以前より力が上がっている? いや、あの見慣れない剣、あれが原因だな)
シンクが考える最中、バサラは彼との距離を一気に詰めた。互いの間合いに入り込むもその領域ではバサラの方が有利である。
魔導の運命。その特徴は共鳴器に合わせて多彩な攻撃を繰り出せること。その反面、自分に合った共鳴器に出会えなければ実力を発揮することが出来ず、近距離戦闘においてはその実力を十二分に発揮することが出来ない。
だが、シンクは違う。
魔導の運命というだけで努力を怠るものは大量にいた。共鳴器と出会えず、腐るものが一番多い運命であるにも関わらず、彼は何一つ努力を続けることを怠らななかった。
いや、し続けた。
故に、自らが出会った共鳴器を改造し、自身が使いやすい形へとさせると同時に、その武器の一部を取り出した。
バサラが自身の間合いに入った瞬間、杖の一部を地面に捨てるとそこには片刃の剣が現れる。
彼は魔導の運命を持ちながら、近距離での戦闘を得意とする無二なる存在。バサラの振るう一撃を、剣に揺蕩う雲を使い、受ける。
バサラの一撃はこれまで同様で横振りのモノであり、シンクはそれを知った上で受け止めた。雲を固定化、自身の運命による防御の重ねがけ、それら全てを使い、バサラの一撃を、初めて止めた。
バサラは止められた剣を持ち手を変え、逆回転し、振り回すもそれすらもシンクの雲と剣は知っていたかの様に防いだ。
バチリと重低音が鳴り響くと互いに近距離で見合いながら、笑う。
弟子の成長を見て溢す笑顔と、師の本気を見せてもらえた不適な笑顔。
「やるね、シンク」
「当たり前だ、俺が四護聖になったのはまぐれじゃなくて当然だからな」
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