二十二話 とある四護聖の分析 其の伍
近距離での剣と剣の撃ち合いは攻防一体で行われる。シンクが剣を振るうとバサラも剣を振るい互いの刃と刃が交じり、火花を散らした。
だが、剣撃だけがバサラの武器ではない。
振るわれていた剣に気を取られていたシンクの隙を突き、少し遅れてバサラは蹴りを入れた。
シンクはそれに勘付いており、止めようとするも両翼からの攻撃を防ぐことは出来ないと判断する。
無理にさせようとせず、その蹴りを受け吹き飛ばされるもただ吹き飛んだのではなく、それはバサラとの距離を取るためであった。
吹き飛ばされながら次の攻撃へと転じており、雲を再び矢の形に変化させ、それらをバサラに放つ。
(牽制かな? シンクは何かする時に一度、その準備のために距離をとる癖がある。なら、今からやるのは一つ)
バサラは矢を剣で振り払い、再び距離を詰めた。
だが、その間合いに簡単に入り込ませるとという事、それがバサラの油断を誘い出すものであることを彼は知ることになる。
「
踏み込んだと同時に、目にも止まらぬ速度で雷を纏う突きが放たれた。
間一髪のところで避けるもバサラの頬から血が流れ、それを見たシンクはすぐさま二度目の突きを放つ。
(や、やっちゃったぁ。昨日、ジータからもらった服、破けちゃったぁ)
一瞬の心の乱れ、シンクは逃さず、突きを放つとバサラはそれを
「どうした! 先生! キレが無くなって来てるんじゃないか!」
シンクは煽るも内心、バサラの丈夫さと運命を纏った攻撃であるにも関わらず、その効果を一切受けていない彼に驚いていた。
(やっぱり、あの剣、あれが原因か? 雷を纏っている高速の突き。それを受けても尚、先生は気にしない。気にしないどころかそれが無いような感じ。あの体もそうだが、あの剣も多分、アダマンタイトだけで作られてるな)
考えをしながらバサラへの攻撃の手を緩めず、むしろ激しくしていく。だが、追い詰められている様に見えるバサラはシンクの放つ突きの氣をしっかりと目で追っており、分析が完了すると同時に攻勢に出るためにシンクから距離を取った。
生まれた距離は数メートル程。
その数メートルをバサラは使いこなす。
片手で
短すぎる助走であるにも関わらず、シンクの目の前で追っていたバサラが一瞬だけ姿を消した。
そして、目の前に現れると同時にシンクの腕に一瞬の
「なっ」
シンクは自身の武器が
シンクは武器を向けるバサラに視線を向けると目は師としてのモノではなく、一人の戦士のものとなっていた。
そんな目を見たシンクは武器を無くした自分に勝率はないと判断すると手を挙げ降参の動作を見せた。
そんな中、ジータはバサラの動作一つ一つを追っており、彼女だけがこの場で彼がシンクに見せた技のことを理解ていた。
(一瞬で消えた様に見せたのはブラフ。シンクの共鳴器の刃に御師様の持つ剣の刃を当てた直後に流れるように小手を打って空中に浮いた獲物を握る。一切の無駄を省き、隙のない動き。やっぱり、健在のようですね! 私たちの御師様は!)
ニコニコとしながらそんなことを考えながらジータはバサラとシンクの決闘の勝敗を宣言する。
「勝者、カツラギ・バサラ! さぁ、御師様! 決闘の勝者は敗者へと要求が出来ます! 何を要求しますか!」
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