二十話 とある四護聖の分析 其の参

「シンク、唐突すぎないかい?!」


 愛弟子に決闘を申し込まれたバサラは驚きを隠せず、大声を出した。


「この機械、これはとんでもない品物だ。だが、俺のじゃない」


「シンクが欲しいなら全然渡すよ」


「それだと、俺が納得しない。俺はあなたを尊敬してる。これはあなたの手柄であり、所有物だ。だからこそ、俺はあなたの所有物を貰い受けるのではなく、勝って、俺のモノにしたい」


 普段、やる気が無く、気怠げのシンクであったが、バサラと久々に出会ったのと彼が持ってきたモノによって、気合が入り、入決闘を持ちかけた。ジータはそれを見ているだけで止めることはせず、むしろ、バサラのシンクの決闘を見たいのか、ニコニコしていた。


「え、えーと、じゃあ、うん、そうだね。シンクは一回決めたらそっから折れないからね。わかった、カツラギ・バサラはその決闘を受け入れる」


「先生なら受けてくれると信じてた。さぁ、やろう。あなたに挑むは四護聖、シンク・ホーエンハイム。見せてくれ、先生、あなたの本気を」


***


 ニーベルング城、騎士棟開発局実験場。

 シンクとバサラは互いに武器を手に取り、見合っていた。シンクの手には見たこともない、筒状の武器が握られており、バサラはそれが何であるか、少しばかりドキドキしている。


 そんな中、ジータが決闘の開始を宣言するために声を上げた。


「これより、シンク・ホーエンハイム対カツラギ・バサラの決闘を始める。立会人はジータ・グランデが執る。両者、礼、構え、始め!」


 決闘の開始とともにバサラはシンクとの距離を詰めようと一直線に走り出す。そんな彼を、シンクは自らが握る武器の獲物にしようとその先端を向けた。


 丸く筒状になっている先端から、シンクがその武器についている引き金の様なものを引くとそこから尋常ではない程の音と共に、何かが飛び出した。


 丸い鉄状の何か勢いよく飛び出すとバサラはそれを自分の体にぶつかる直前で剣を用いて弾く。


 弾かれた鉄の球は地面に落ちるも、それが宿す危険な氣を見て、内心ヒヤヒヤしていた。


(え? 何だ? 今の? 弾けたのはよかったけど、当たってたら僕、死んでない? あれ? 殺気を込めずに人を殺せる物、だよな?)


「ふむ、やはり、先生は簡単に弾くか。すまない、最近開発している武器でね、銃と言うモノだ。クロスボウの原理を応用して、鉄の玉を火薬で加速させ、飛ばせたらどうなるか? そんなことをコンセプトに作った」


「いやいや、待って、シンク待って。これはすごいモノだよ。でも、これ僕当たってたらどうなってた?」


「肉体を貫通させるつもりだった。先生は強いからな、まぁ、死にはしないだろ」


 その一言でバサラは思い出す。かつて、彼が作った道具で何度も道場を燃やされたこと、備品を幾つも壊されたこと。


 四護聖シンク・ホーエンハイム。

 騎士の中でも、バサラの弟子の中でももっと危険な男である。

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