十三話 初めては獣狩りですか? 其の肆
(なん、だ? なんなんだ? 内臓に、響くこの痛みは?! 冷静さに欠けていた。それは確かだ! だが、それだからといって武具を貫通して内臓へとダメージを与える突きだと?! 認めぬ、認めぬ、認めぬ、認めぬ、認めぬ!)
ユースはレイピアを杖の様に使いなんとか立ち上がると、バサラを睨みつける。バサラは彼が膝を突いている間、一切攻撃をせず、いや、する素振りすら見せなかった。
「侮辱、か?」
ユースはなんとか声を放り出すも、それに対してバサラは人が変わった様に応えた。
「冷静さを欠いた人間と戦って認められることはない。実戦ならそれだけでも命取りになるよ」
「黙れ、黙れ、だまれだまれだまれだまれだまれ!」
その一言はユースの怒りに更なる追い打ちをかけ、レイピアを握る力を強めると彼は自身の持ち得る全力をその場で解き放つために口を開いた。
「我、運命は闘士! 猛る闘争、握るは剣! 共鳴器・グロウよ、我が運命の導に従い解き放て! その真なる姿を!」
ユースが握るレイピアは主人の言葉に応える。
共鳴器。それは自分の運命の力を100%以上に引き出し、その人だけが握ることが出来る専用武器。アダマンタイトと呼ばれる特殊な鉱物からのみ作成でき、それは運命に惹かれ、運命は共鳴器に惹かれる。
互いに揃った運命と共鳴器は力を使う時、同調し合い、それは元ある形ではなく、真なる姿へと変化する。
ユースが握るレイピアは彼の背丈よりも長い大剣となり、赤い刃を輝かせながらバサラ目掛けて再び突っ込んだ。
闘士の運命の特徴。それは劇的な身体能力の向上。
先程の倍以上の速さで突っ込む、ユースにバサラはその目を使い全力で対応する。
大剣の間合いと、闘士の運命による身体能力の向上。二つの条件が揃った時、それは強者をも噛み殺す、圧倒的な攻撃性能となる。
長いリーチによる剣撃、それを弾くもすぐさま攻撃のモーションに移っており、バサラに容赦なく襲いかかった。
(速い、しかも、長い。間合いだけで言ったらジータよりもある。氣も常に、運命によって変化しているから読みにくいな。冷静さを欠けている様で、さっきよりは全然落ち着いてるし、あの叫びも演技。思ったよりも技巧派じゃないか)
バサラはユースの連撃を分析し、自身が握る剣で防ぎ続けるもそれは長く続かないことを自分自身が理解していた。
その理由、それは体力の衰え。歳を重ねるごとに幾ら保とうとしてもその衰えは必ず来るものであり、神殺しを成した者ですら老いと言う現象には対処出来ない。
一日で、長時間の移動に加えてジータの組手と兜割り。それらはバサラの肉体に疲労を残していた。
防ぐ事に限界を迎えたバサラはユースの攻撃の些細であるが明確に大きい氣の隙を突き、剣を振るう。力任せの一撃であったが、それは兜割を行った時同様の力を込めており、ユースは少しばかり吹き飛ばされるとお互いの間に距離が生まれた。
「久々にやるよ、
バサラは呟くと握る剣と足腰に力を入れる。
バサラの一撃により、吹き飛ばされたユースであったが3メートルほどの距離は彼の間合いの中であった。
故に、止まることなどしない。猛る闘志をぶつけるために、バサラへと一撃を放つ。バサラはそれに対して、彼もまた、ユースの間合いに自ら踏み込んだ。
(自分から、俺の間合いに入り込んだ?! 死にたがりか?!)
攻撃が当たる直前、バサラは目でユースの剣撃の氣を捉えており、それに対して自身の持つ剣をぶつけた。
刃が交じり、火花を散らすと受けるのみであったバサラは攻撃に転じる。
両手で剣を握り、バサラは自分の間合いであるからこそ出来る力任せの大ぶりの一撃を放った。
バサラの剣は速くはない。それを防ぐにはある程度の技術を持った者であれば容易に防ぐことが出来る。
だが、それは受けるだけであればの話である。
かつて神殺しを成した剣と、その主人。
それらが揃った時、その一撃は万物屠る必殺と成った。
ユースはバサラの剣を受けた瞬間、視界が暗くなり、自身の体が吹き飛ばされたと言う事実を理解出来なかった。
倒れたユースは起き上がらず、バサラは滴る汗を拭くと一息を置く。
ラビは起き上がらないユースに近くにより、彼が気を失っているのを確認すると決闘を執るものとして結果を告げた。
「勝者、カツラギ・バサラ! 決闘の取り決めにより、彼を今回の任務の獣狩りを任命する
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