第6話 遥の任務内容

「浜地、今なんと?」

遥の顔が驚きに満ちている。

「遥、このまま浜地家にいても浜地家が被害を受ける。

 僕は、遥と一緒に逃げようと昔約束したけど、それはできない。」

「洛様‥‥‥‥!」

遥も神妙な顔で頷く。

「となると、決起するしかない」

「そこで、遥には城の中の無関係の人たちや城の周りに住んでいる町人たちを逃がし

 てほしい」

「遥も戦いたい」

「遥、この任務は遥にしかできない。それに誰が戦うと言った?」

「え?」

「あくまでも武力行使は最後の手段。それまでは情報で兄上たちを自滅させる。」

心のなかで、兄上たち=お馬鹿さん と変換する。

「わかった。確かにその任務は重要だね、にい様。

 でも、みんなを連れてどこに逃げたらいいの?」

「心配ご無用だよ、遥。宮津から西の方にある峰山という城の木浪殿に許可を頂いている。」

遥がひとまず安心したような顔を見せた。

「木浪殿なら安心です!」


「僕も木浪殿なら安心して遥とみんなを預けられるが、その道中の道が問題なん

 だ。だよな?浜地」

「はい。ここ、宮津から峰山へ行く道は基本的には丹後街道を使う経路しかないの

 ですが、我が大宮家の領地の端に当たる岩滝与謝野は、御兄上と近い岡本由和(お

 かもとよしかず)のものでございますので、妨害を受けるかもしれませぬ。」

「うん。そこで遥の出番。地理に明るい遥には、夜の間に宮津から船で橋立の砂州の

 北に上陸してもらう。そこから、山を超えて峰山を目指してほしい。」

「遥も宮津の海までならわかりますけど、その先は流石にわかりませんよ」

「大丈夫、木浪殿が橋立の砂州の北側の海岸まで明日子の刻に迎えに来てくれること

 になっている」

「それに遥様、私の弟、浜地澄都(はまぢすみと)が共に参ります。情報が与謝野に回

 らないように手を回しておきます。」

「良かったです。海の上では橋立を目印に移動することができるので、あとは天候が

 良いことを祈るのみですね!」


遥がふと我に返ったようにこちらを向く。

「にい様と浜地はどのようにして情報で兄を潰すのですか?遥も知りたいです。」



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この物語で、丹後街道は現在の国道176号線と312号線を指しています。

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