第18話 『楽園にて』 その3


 ぼくは、赤血探偵を見た。


 ぼくたちは、例の隠れ頭巾を被ったままである。


 彼は、微笑みながらうなづいたのであった。


 『はい。わかりました。』


 ぼくは、最初に椅子を引いてもらった手前もあり、そう答えたのである。


 『では、お待ちを。前菜を先にお持ちいたします。』


 『はあ?』


 うどん定食に前菜が来るとは、あたまから思っていなかったのだ。


 『さすが、なかなか、格式ある店とみえますな。』


 赤血探偵は言った。


 それから、テーブルの端っこにあった、しおりらしきの束から一枚を取り出したのである。


 『まあ、みごとに、意味不明の文字が並びますが、これは解りますよね。』


 そいつは、わが言語である。


 『バールアリアンコ・レストラングループについて。……わがレストラングループは、この銀河系最大のレストラングループです。いまから、地球年代で五億年前に、創業者、バールアリアンコにより始められた小さな銀河料理店から営業をはじめ、いまでは、全太陽系に12500店舗を有し、さらに現在は地球名アンドロメダ銀河系にも1500店舗進出しています。この、いまだ未開の星地球にあっては、まさに唯一無二の本格的宇宙レストランです。あくまでも、地元の産物に拘り、しかも、銀河系政府のあらゆる衛生面の課題をクリアした高級食材による本格的料理をお楽しみください。また、当設備には、ハイセンスなホテルが付属しております。そちらは、バールアリアンコホテルグループの案内をご覧ください。完全セキュリティ完備で、地元の危険生物とは分離されておりますので、ご心配はありません。ここは、地球の楽園です。』


 『なんと。冗談のような。』


 『まあ、前菜が来ましたよ。ちょっと、確かめてみましょう。』


 赤血探偵は、あっさりと言ってのけた。


 ウェイターさんは、上品な焼き物に盛られた前菜を運んできた。


 『本日の前菜は、高級地球食人草のマリネでございます。当レストラン直営の菜園で栽培されました。地球の高級魚ふぐと合わせてあります。』


 『あの、しょくじんそう、とは、なんでしょうか?』


 探偵が尋ねた。


 『はい。地球植物の一種です。とても生命力が強い植物で、滋養強壮に優れ、葉っぱ一枚を食べるごとに、1000年長生きすると言われるほどです。』


 『ほー。』


 『まもなく、オーナーが参ります。では。』


 『と、いうことですが、いかが? そこらあたりは、あなたの方が詳しいでしょう。』


 見れば、それは、紛れもない食人草である。


 鮮烈な緑、独特のぷちぷちした葉っぱの形。


 このぷちぷちが、より集まって、どんな大型生物でも一度捉えたら放さない力を発揮する。


 さらに、強力なパワーで、生き物の全てを分解して食べ尽くしてしまう。


 捉えられた生き物は、まずは透明になり、それから、すぐにばらばらに分解してしまう。


 なにも残らない。


 それは、食人草の養分になる。


 栄養満点である。


 ただし、人間は、食材にならないように、繁殖地域は隔離されている訳だったし、食人草は、もちろん光合成を行い、地下から養分を吸い上げる。そこは、普通の植物なのである。それでも、滋養強壮にすぐれた効果を発揮するのだ。


 と、言われているわけである。


 そいつの管理や、栽培は、政府の管轄だったわけだ。


 『いやあ。たしかに、食人草ですね〰️〰️🍀』


 『あなた、食べた事あるわけだ。』


 『まあ。確かに。何度もあります。』


 『はあ〰️〰️〰️。おそろしやあ〰️〰️。』


 赤血探偵は、ちょっとのけぞったのだった。


 そこに、向こうから、とぼとぼと、歩いてくる大きなお腹の人がみえたのだ。


 

      🥩












 


 

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