第15話 『草原の真実』 その7

 

 『あからさまに、怪しいなあ。』


 ぼくは、思った。


 『わなかもしれません。』


 『はははははは。我々をわなにしかけて、なんの得があるのでしょう。心配いらないでしょうな。』


 『はあ。まあ、そうなんですがね。』


 赤血探偵は、根っからの楽天主義だと思った。


 なるほど、そうでないと、なんでもいちいち気にしていたら、探偵は勤まらないかもしれない。


 一団は、なんのけれんみも、不自然さもなく、扉の中に消えたのである。


 『どうしますか?』


 『そらあなた。これで、帰るわけには行きません。先に、行く以外になし。』


 『と言いましても、ボタンもなにもないですが。』


 『ならば、なにもしなくても、来る。……ほらね。』


 その扉は、まるで音もなく、あっさりと開いた。


 もっとも、エレベーターの扉が、轟音とともに開いたという話しは、いまだかって、聴いたことがないが。それは、かなり不思議である。


 『さあ、行きましょう。きっと、新しい世界の扉が開きますよ。』


 『はあ。』



     🈺



 しかし、さすがは、赤血探偵であった。


 すべてを見通しているのだ。


 ほんの数秒で、扉が開いた。


 『なんとお?』


 『うわあ。』


 そこには、恐るべき原色の世界が拡がっていたのである。


 まさに、モノクロの世界から、総天然色の世界に突如として降り立ったようなのである。虹を越えたようだった。


 『これは、地上ではないな。予想したような、一面みどりの草原でもなかった。』


 まるで、異世界に来るお話しみたいだ。


 『なんでしょうか。これは。』


 『ふうん。いや、レストランとか。』


 『え?』


 たしかに、なんとなく、ジャングル・レストランと言うと、しっくりきそうだった。


 実際に、ひとりのウェイターさんらしき方が近づいてきた。


 『いらっしゃいませ。お席にご案内いたします。』


 『あの、ぼくたち、しっかり、見えているようですが。』


 『ふうん。こいつは、物理法則がいささか違う世界みたいですね。魅惑的だ。』


 『は?』


 『まあ、せっかくですから、案内されましょう。はははははは。』


 赤血探偵は、まさに平常心である。



     🍴🍝🍺🍴


 

 


 


 


 

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