第10話 『草原の真実』 その2
赤血探偵は、この時代、まだ若かった。
新進気鋭の青年探偵だったのである。
ただし、すでにこの世の中は、オカルト的な指導者による戦乱に疲れ果てていて、人類は勢いを失い、衰退局面に入っていた。
にも拘らず、赤血探偵は楽観的であった。
『むかし、ブラームスさんは、川沿いを散歩しながら、マーラーさんにこう言ったらしい。‘’わたしをもって、ヨーロッパの音楽は終焉を向かえるだろう。‘’ しかし、マーラーさんは答えた。‘’せんせ、あそこに最後の波が来ていますよ。‘’ と。』
赤血探偵は、よくこれを引き合いに出して言っていた。
『ほんとの最後なんて、あっという間に来るだろう。緩慢な最後は長い。楽しむべきだ。』
ぼくは、その話を知っていた。
『なぜ、この草原があるのかは分からないかもしれませんが、なぜこの町があるのか、なぜ、間違いが起こるのかは、知りたいのです。でも、今はなにも公開されていません。』
『なるほど。いいでしょう。調査してみます。ただし、相手は国家だからな。ちょっと手間取るかもしれませんよ。報酬については、国から貰います。はははははは。』
『はあ………』
ぼくは、かえって萎縮したのである。
『なに、心配はありません。たぶん、真実を知っているのは、にさん人でしょう。あとは気にするひとは、いない。条件はひとつ。あなた、助手をしてください。無給でね。』
🆓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます