第7話 俺の寝具ふたたび

 気が付くと耳元でフガフガと匂いを嗅がれ、しかも顔中を舐め回されていた。


 今日は、朝から子犬達の洗礼を受けて起床となった。腹が減ったと催促している様だ。


 ぼやけた頭のまま身体を起こすと、子犬達が『キャンキャン』と俺の周りを走り回る。



 …………元気でなにより。



 テントの入口を開けると、外の匂いを嗅ぎながら子犬達もゆっくりと外へ出て来た。


 テントを片付け、河原へと一緒に歩いて行く。


 昨日の餓鬼もどきの姿は見えなかったので、川で洗顔と歯磨きを済ませ、朝食の用意を始めた。


 先に子犬達と一緒に牛乳を飲む。


 流石、牧場直送の牛乳だ。濃厚で甘みもありスーパーで購入した牛乳とは一味違う。しかも北海道の地域名が入った牧場となれば、それだけで美味しく感じる魔法が掛けられていると言っても過言じゃない。

 例えブランド力に踊らされているとしても、美味いは正義だ。子犬達も口の周りを白くして、そう言っている……はずだ。


 その間に、昨日の胸肉とキャベツとポテトのピューレを和えて皿に盛る。すると、置いた途端にガッフガッフと食らいつく2匹。

 犬もまっしぐらだな。


 俺はと言えば、今日は鮭の塩焼きと玉子焼き、漬物に味噌汁の定番朝食にした。


 う〜〜ん…良い塩梅の鮭だ。脂ものってる。

 沢庵の漬物も仄かに梅の香りがしてとても美味い。玉子焼きは、自作なので普通だ。


 さて、今日は使ってしまったポイントの挽回に励もう。俺のエア◯ィーヴが待っているんだから。

 それに、鮎一匹で800ポイントに交換出来るなら、ひたすら釣って交換すればエア◯ィーヴの交換ポイントまで一気に貯められるはずだ。


 ただ、昨日の餓鬼もどきの存在が気掛かりだったので、このまま川沿いを下流に進んで行く事にした。


 朝食後、子犬達のペースに合わせてゆっくり進む。途中で気になった石を拾っては交換して行く。生憎と見る目が無いので、殆どが1ptにしかならないが、たまに高い(100pt〜)に交換出来る石もあるので、塵も積もれば山となると、昼頃までは歩いて・拾ってをしながら距離を稼いだ。



「さて、そろそろ昼飯にしようか。タロとジロも腹減ったろ?」

「「キャン!!」」

 


 子犬の名前は両方共オスだったので、南極大陸でも活躍した犬の名前を付けさせて貰った。


 ソリは引かなくても良いから、強く逞しく育って欲しい。


 昼飯は俺も肉を食うか。


 若くなった身体は、胃もたれする事も無く脂物でも何でも受け付けていた。お陰で一度食べたステーキ肉が美味すぎて大変だった。


 これだらかポイントが貯まらないんだよ。


 だがしょうが無い。何度も言うが美味いは正義だからな。水戸黄門の印籠の様な物だ。

 そうだ今日はトンテキにしよう。タロとジロも小さくカットすれば食えるだろう。


 そして、ブランドホイホイに引っ掛かった俺は、十勝の『ホエイ豚』を選んでまた散財散ポイントをした。

 乳酸菌信者としては、生きた乳酸菌を摂取した豚が美味くないはずが無いと即決。

 タロとジロも大変美味しかった様で、一皿食い終わった後に『キュ〜ン…』とお代わりを催促する程だった。



「よし、タロとジロは近くで遊んでおいで。俺はここで釣りをするからな。遠くへ行くんじゃないぞ?」

「「キャン!」」



 返事は良い。だが言いつけを守るかは別の問題だ。釣りをしつつも余り目を離さない様にしようと、気を付けながら釣り糸を垂らした。


 念の為、タロに赤い首輪を、ジロに青い首輪を着けてから、太いロープで出来た噛むおもちゃを何種か渡しておく。


 おお!早速2匹で引っ張り合ってる!


 この辺は本能なのか、生え始めの歯が痒いのか不明だが怪我をしない程度に楽しんで欲しい。


 こちらの方も相変わらずの爆釣ぶりで、どんどん釣れていた。

 一度スカリが一杯になった所で、〆てポイントへと交換し再び釣りを続ける。その作業の途中でタロとジロが寄って来て、その場で丸まり出した。どうやらお昼寝タイムらしい。


 昨日2匹を拭いてから乾かしたタオルを出して、その上に乗せてやると匂いに安心したのか直ぐに寝入ってしまった。


 そうして夕方まで釣りを続け、スカリ4つ分の鮎やマスを釣り上げた。ただ、マスは鮎ほど釣れなかったので一匹だけ交換して、残りは俺の食用として確保。


 夕飯にはマスでちゃんちゃん焼きを作り、タロとジロには湯引きして脂を落とした牛肉と蒸した野菜を細かくしてあげた。


 昼間のホエイ豚も大丈夫だったから、牛肉も平気だろう。



「さあさあ!お待ちかねの交換タイムだよ!エア◯ィーヴ!」

「「キャウ?」」



 食後のテントの中で、変なテンションになった俺をタロとジロは不思議そうに見上げている。

 今日は川の水で身体と頭も洗った。

 お迎えする準備はバッチリだ。


 最初はシングルにしようと思ったが、タロとジロの感じから1人と2匹で寝れるサイズにした方が良いと判断し、ダブルのマットレスとシーツ、枕を交換した。今日の稼いだポイントプラスアルファで溶けて行った。



「ふぉぉぉーー!これだよ!これ!!早く組み立てよう!」



 3つのピースを付属のカバーに入れ、中敷きを敷いてカバーを閉める。その上に薄手のシーツをしたら完成だ。


 枕を置いて直ぐ様横たわる。


 ああ…この安定感。寝返りのし易さ。しかも洗える。枕もマットレスも人それぞれの好みだろうが、俺はエア◯ィーヴ一択だ。例え16万ptが消えようとも!


 タロとジロもマットレスに乗って来た。


 さあ、一緒に寝ようか!ぐっすりと!!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る