第3話 ポイントとは?
和夫は考える事を一先ず放棄した。
自分が生きていること、若返っていること、突如知らない場所に居るとこ、意味の分からないバッグが付いた服を着ていること。
全て今まで持っていた常識では説明不可能だったから。
そこで無理矢理、とりあえずここは、とっても大好きドラ◯もんの世界なんだと思う事にした。
神様の悪戯で生き返り、何故か四次元ポケ◯ト付きの服を着て、『としの泉ロ◯プ』の水を飲んだ為に若返ったんだ。それで知らぬ間にどこで◯ドアで見知らぬ土地に置き去りにされた。以上。
それより今はこの森から人里に辿り着く方が急務だ。食料も桃(仮)しかない。
それが無理なら、せめて釣りが出来る場所があれば……。
年を取ってからは、山に入る気力が衰えたせいで主に海釣りをしていたが、渓流や湖でのバスフィシングもやっていた。
一番好きだったのは渓流釣りだ。
この森で、もしそんな川が見つけられたら最高だ。今の所は天気が崩れる気配はないので、ついでに探してみよう。
そうして再び歩き出した時には、森の中をトレッキングしているかの感覚で歩を進めていた。
適度な外気温と心地よい風。緑の濃密な香りの中で、久しぶりに自由に闊歩する爽快感を和夫は味わっていた。
途中、
そうして当て所なく歩いていたが、背にした太陽がとうとう傾き出した。夕暮れの色に染まり出した空を見上げ、今日の探索はこれまでとし、夜の安全確保の為の準備に取り掛かる。
「………流石に夜の森を歩く訳にはいかないな。火を起こして野営の用意をするか」
大きな木の側で下草を抜き、邪魔な枝を払ってスペースを確保し、焚き火用の枯れ木を集めた。
ライターがあって良かった。原始的な火起こしをやらずに済んだな。
和夫は大木を背もたれに、腰を下ろして枯れ木に火を付けた。
手頃な枝をナイフで削り、
「はぁ〜〜〜〜…。本当にこれはどうなってるんだろうねぇ……」
時間があるとやはり考えてしまう。自分の置かれた、この意味不明な状況を。
手掛かりとなりそうな物は何一つ無い。
ここが何処かも人と会えなければ聞くに聞けない。せめてスマホがあればなと思っても、残念ながら持っていなかった。
手持ち無沙汰になり、カタログ冊子を眺めてみた。このテント1つでもあれば助かるんだが、とページを捲って行くと、炙っていた
カタログを脇に置いて
串から1つ抜き、割って確かめる。匂い、味、どれも
自分の知ってる
もう1つ桃を齧りながら再びカタログをめくった拍子に、開いた見開きのページに桃の汁が一滴落ちてしまった。
『??をポイントに変えますか? Y/N』
突然、眼前に現れたポイント変換の確認画面に和夫はフリーズした。
「は?ポ、ポイントに変える?桃の汁を?!」
試しに『Y/N』の『Y』に触れてみると、目の前の画面が切り替わった。
『今回の取得ポイントは0ptです』
「ははは……まあそうだよな。でも、これって桃だったらどうなるんだ?」
バッグから新しい桃を取り出して、見開きの右側に置いてみた。
桃の汁の時は紙に染みたんだと思ったが、桃本体を置いてちゃんと分かった。
桃はカタログに吸い込まれて消えていった。
ここに来てまた、意味不明な現象に暫く唖然とするが、そんな事はお構いなしに『??をポイントに変えますか? Y/N』とまた同じ表示が現れる。
『Y』に触れると、次の画面が表示された。
『今回の取得ポイントは1000ptです』
意味は分からないままだが、ポイントに交換出来た!和夫は即座にページを捲りキャンプ用品の中から慎重に吟味した。
今までは、暇つぶし程度に眺めていたが、交換可能となれば話は別だ。小さなカタログページを見ながら、老眼じゃなくなってて本当に良かったと誰へともなく感謝した。
「……………………よし、決めた!」
暫くページを見て選んだのは、3〜4人用のワンタッチテント。そのテントには入口部分に
ただ、交換するには5,980pt必要だったので、追加の桃を投入。
早速、テントを交換したが品物はどこに?まさか旧住所に配送とかじゃないよな?!
と、少し慌てたが上着の背面四次元バッグを探るとテントが入っている!
「うわぁ…本当に交換出来たよ………」
半信半疑だったが無事にテントを手に入れられ、設置するスペース確保してテントを広げる。
テントとタープを付属の金具で地面に固定し、入口の生地を捲る。すると4.5帖程のゆったり空間が広がっていた。最後に丸めてあったシートをしっかり床に敷き詰めて完成だ。
「う〜〜ん…寝心地が悪い」
早速、設営したテントに寝転んでの正直な感想。付属の床用シートが、これがまた薄い!
寝具だけには甘やかされていた和夫は、せめてエアウ◯ーヴのマットレスパットを敷きたいと思った。だが、ポイントが71500ptも必要。流石に数の限られた食料を犠牲にする訳にもいかず、その日は諦めてほぼ地面の固い寝床で就寝し、絶対にエアウ◯ーヴのマットレスと交換してやると心に決めた。
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