秋に思う

第1話

　　秋に思う

寒がりの私は

冬が苦手である

よって冬をひかえた

秋は憂鬱である

憂鬱自体は

そう悪くない

浮かれ気分より

見どころがある

どうせ迎えるなら

困った冬を

甲斐あるものに

過ごしてみたい

寒さの中で

得たぬくもりは

より真実を

宿している

うす暗がりに

差す光は

希望のように

あたたかい

雪原に見る

川の流れは

春の息吹きを

孕んでいる

冬空に仰ぐ

星の光は

澄んだ瞳のように

美しい

すべてこれらの

きびしい要素は

そのものの価値を

際立たせるのだ

などと　人知れず私は

あれこれと慰めを探し

来（きた）るべき

冬の到来に備えている

　　　　　　　　（了）