四
翠玉の屋敷内には、暁嵐から贈られた花や衣に装飾品がたくさんある。
翠玉が贅沢になるんじゃないかと言っても、暁嵐は自分に当てられた予算を使っているから問題ないと言うし、もういらないと言っても聞かないのだ。
まったく、困った人だと思いながら、翠玉は扉に向かう凛玲の背中を眺める。
凛玲は扉を開いて、外に顔を覗かせたが、すぐに翠玉の元に戻ってきた。
その手には、一通の手紙がある。
「……
「和?」
「雲嵐様付きの宦官です。雲嵐様は、陛下……暁嵐様の一番歳が近い弟君です。母親は側室なので、正室のお子である暁嵐様とは、腹違いのご兄弟になられます」
「ふぅん、その弟の宦官が私に一体なんの用かしら?」
翠玉は凛玲から手紙を受け取って、表裏をよく見てみる。
真っ白でしっかりとした横型の封筒だ。そこにはなにも書かれていなかったので、封を開けて中を見てみる。
取り出した便箋には、こう書かれていた。
『翠風殿、突然このような文を差し上げて申し訳ありません。翠風殿の素晴らしき舞いに心打たれ、文をしたためております。ぜひこのお気持ちを直に伝えたく、本日未の刻、
文章を読み終えた翠玉は、やや首を傾げた。
「……凛玲、華殿というのは、なに? 凛玲からの手紙にも書いていなかったけど」
「……華殿は、旺玖院と御殿のさらに向こうにある、季節の花を楽しむ広い庭園よ。暗殺は後宮で行う予定だったから、後宮周辺の地図しか伝えなかったけど」
「へぇ、そんな場所が……」
翠玉は細い指先を唇に当てた。
そして湯呑みを見ると、茶柱が立っている。
――風向きが来たかしら……?
翠玉の豊かな唇の端がクッと持ち上がった。
「どうしたの、翠玉? なにが書いてあったの?」
「出かける支度をするわよ、凛玲」
「えっ?」
「陛下の弟君からのお誘いだもの」
不敵な笑みを浮かべる翠玉に対し、凛玲は深刻な表情をしていた。
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