四、依頼人探索

 暁嵐の生誕祭が終わって数日、翠玉の屋敷には女官たちが押しかけていた。

 三人の女官は、玄関先で立ったままキャイキャイ騒いでいる。

 その視線の先にいるのは、丸い机の席に腰掛けた翠玉だ。

 先ほど凛玲が作った昼食を食べ終え、今はお茶を飲んでいるところだった。


「いやぁ、ほんとにすごかったですね、こないだの翠風様!」

「ほんとほんと、まるで花が舞っているかのように可憐で!」

「だけど力強さもあり、時折ゾクリとするほどの迫力もあって、思わず見惚れてしまいましたー!」


 彼女たちは、最初に翠玉の着替えをしてくれた女官たちだ。

 優しい上に見事な舞いまで観せられた三人は、すっかり翠玉の愛好者になっていた。


「しかもその後の陛下の……」

「わしが愛する翠風……」

「この者になにかあればわしが容赦せん……」

「キャーーッ!」


 後宮にこもりきりで、娯楽も少ない女官にとって、翠玉と暁嵐の熱愛報道は刺激的で魅力的だった。

 もちろんこんなことは、翠玉のところでしか言えない。

 自分がついている皇妃の前で、他の皇妃を褒めたりしたらなにをされるかわからないからだ。

 女官は基本、皇妃の世話が担当なので、家事と頼まれた勤めさえこなせば、空いた時間は自由に使える。皇妃に許可を取れば、席を外すことも可能だ。

 だから彼女たちは必死で勤めを果たし、僅かに作った時間で翠玉のところに顔を出すのだ。

 翠玉はそんな彼女たちを、微笑ましい様子で眺めている。

 始めこそ、女官たちへの対応も面倒だったが、今ではもうすっかり慣れた。立ち振る舞いも洗練され、皇妃の生活も板についてきた翠玉である。

 そんな翠玉のお付き女官である凛玲は、玄関のそばに立ち、他の女官の侵入を阻んでいた。

  

「気持ちはわかるけど、あなたたち、翠風様の屋敷に来すぎよ」

「だって、翠風様にお会いしたくて……」

「女官にこんなに優しくしてくださる皇妃様は、翠風様くらいだもの」

「いいなぁ凛玲、うちと代わってほしいー」


 顔を見合わせながら「ねー」と声を合わせる三人。

 女官は皇妃の奴隷と言われているくらいなので、彼女たちが翠玉を慕う気持ちもわかる。

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