第31話 田中さんが分からない
先がき
前回の話を修正してます。
なので、こんなシーンあったけ?と思った方は前回の話を読んでもらえると助かります。
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「田中さんが好みのタイプだから」
「え?」
ぐおおおおおぉぉぉぉーーーー!?一体何を言ってるんだ俺はーー!?
田中さんからの問いかけに、俺は思わず口を変な方向に滑らせた自分に内心で悶えていた。
そこは優しい人だからとか良い人だからとか当たり障りないので良かっただろ!?
何でいかにも下心あるって丸分かりなこと言ってんだよ!アホ野郎!
と、とりあえず急いで弁明しねぇと。
「あーー、好みのタイプというのはだな。人となりというか、普段の行動というか、とにかく……そんな感じだ」
「そ、そ、そ、そ、そうですよね!私みたいな女、異性として見れませんよね!分かってます!」
「いや、異性としてはちゃんと見てるが」
「へ?」
「あっ」
だぁぁぁーー!やっちまったーー!?
一体何言ってるんだ俺は!?
良い感じに誤魔化せそうだったのに、何余計なこと口走ってるんだよ!
いや、まぁ、田中さんめっちゃ可愛いし、胸もデカいし、とにかく大変魅力的な超絶美少女だから異性として見れないってのは、無理があるから否定したくなる気持ちは分かる。
だが、わざわざ言わなくても良いだろうが!?
これで完全に俺が下心ありきで近付いてるって白状してるようなもんじゃねぇか!
「そう……ですか」
ほら、見ろ。田中さんが言葉詰まらせてるじゃねぇか!
あぁ゛ぁ゛、穴があったら入りてぇ。
そのまま一生地面の中で引き篭もってたい。
今すぐ土に還って、この恥ずかしい記憶を消し去りたい。
「あの、私も……中山君のこと……ッ〜〜!?いえ、何でもありません。ジュースありがとうございました!」
俺が変な空気にさせてしまったからだろう。
耐えきれなくなったのか田中さんはジュースを拾うと、校舎の方に向けて逃げていった。
あぁ、終わった。
最悪だ。
絶対教室に戻ったら気まずいやつじゃん。
「とりあえず、ここで時間を潰すか」
問題の先延ばしにしているだけなのは分かっている。
でも、何の解決策もないまま戻るわけにはいかない。
俺は先程田中さんが座っていた場所に腰を下ろし、ぼんやりと空を眺める。
その間に色々解決策を考えてみたが、口を滑らせたのがあまりにも痛過ぎた。
どう足掻いても俺が田中さんに下心を持っていることを誤魔化しきれない。
まぁ、一応解決策が思いつかなかったわけではない。
それは、俺が田中さん以外の彼女を作ること。
俺に彼女がいると分かれば下心を持っていないことを一応証明出来る。
が、勿論するつもりはない。
いくら超絶可愛いヒロイン達から提案されようとも、俺はラブコメの頭パッパラパーな主人公ではないからな。
田中さん以外の女に現を抜かすつもりは毛頭無い。
ていうか、仮に証明出来たとしても、田中さんと付き合いたいのに別の女と付き合っているとか本末転倒過ぎる。
でも、これ以外に証明する手立てが思い浮かばないのは事実。
なんか良い方法はねぇか?
…………………………………────うん、全く思い浮かばん。
「こうなったらマイナススタートから頑張るしかねぇ」
となれば、発想の転換だ。
相手に嫌われた状態でも好きになってもらうよう行動するしかない。
これまでコツコツ頑張ってきた努力が無駄になることや、何より田中さんに距離を取られるのは辛いがこれも全部俺の自業自得。甘んじて受け入れるしかない。
幸い、高校卒業するまでにまだ時間はある。
他の奴らが田中さんの魅力に気が付く前に、関係を修復して、彼女になってもらうんや。
「とりあえず、嫌われている相手、女の子、近づく方法、で検索っと」
それから俺は昼休憩が終わるギリギリまでネットの海で、様々なアプローチ方法を模索するのだった。
教室に戻ると、クラスメイト達はまだまだ戻ってきていなかった。
近くにいたクラスの女子に話を伺うと、何でも朝の一件について秋月会長による十勝副会長の断罪式がまだ続いているらしい。
出来れば、田中さんもそっちに行ってくれてたら楽だったのだが、しっかりと彼女は自分の席に座っている。
俺は出来るだけ気配を消して、自分の席に近づき椅子に手を掛けた。
ガタッ。
「「あっ」」
しかし、こういう時に限って上手くいかないもので、椅子を引いた瞬間に音が鳴ってしまう。
それにより田中さんの視線がこちらに向いてしまった。
ヤバい、どうしよう?気まずい。
何かした方が良いのかもしれないが、何も思い浮かばない。
結果、俺がまごついているうちにチャイムが鳴り、何も出来ずに終わった。
先生と共にクラスメイト達が戻り、授業が始まってしばらく。
「じゃあ、横の人とテスト用紙を交換して答え合わせをしてください」
小テストが解き終わったところで、先生からそんなことを言われ、俺は固まった。
何故なら、俺の隣は絶賛気まずくなっている田中さんだ。
俺はおそるおそる田中さんの方に目を向けると、彼女は何やらテスト用紙に書き込んでいた。
何を書いてるんだ?
田中さんの性格的に答えを書き直すようなことことはしないだろうから、もしや、暇つぶしにしたお絵描きに夢中になっているのだろうか。
だとしたら、可愛いかよ。
「あの、中山君これ」
「ああっ」
しかし、俺の予想は間違っていたらしい。
田中さんはシャーペンを置いた瞬間、テスト用紙を差し出してきた。
何を書いていたのか気になった俺は受け取った瞬間に、田中さんがシャーペンを走らせていた辺りを見て思わず目を見開く。
何とそこには『sumica 0818』とメッセージアプリのIDが書かれていたのだ。
俺は思わず田中さんの方を見ると、彼女は何事も無かったかのように答え合わせを行なっていた。
えっ、どういうこと?
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