メインヒロインよりも可愛いモブの田中さん

3pu (旧名 睡眠が足りない人)

プロローグ


 突然だが俺こと中山透は転生者だ。

 といっても、名前から分かる何となく分かる通り剣と魔法のファンタジーの主人公や悪役にではなく、現代日本を舞台にしたラブコメのモブにだが。

 何故自分がモブに転生したとわかっているのかというと、前世で読んでいたキャラクター達が今目の前にいるからである。


海星かいせい!今日こそご飯一緒に食べよ!」

「うん、良いよ。美果みか

「あら、海星君貴方馬鹿なの?今日も私と食べる約束をしたでしょ」

「あっ、そうだった。ごめん、冷乃れのさん」

「お義兄ちゃん!お弁当持ってきたついでに一緒に食べよー」


 今から修羅場が発生しそうな空気を醸し出している彼らは『陰キャだった僕が高校デビューしたら予想以上に大成功してしまった件』というハーレム系ラブコメのメインキャラ達だ。

 高校に入学してこいつらを見つけたことがきっかけで、俺は前世の記憶を取り戻したのである。


 さて、ここで皆さんに質問だ。

 自分が前世読んでいたマンガもしくはラノベの世界にいると気が付いた時、君達はどうする?

 前世の知識を使ってヒロインを攻略する?

 それとも、推しヒロインが結ばれるよう応援する?

 他にも色々あるだろうが俺の答えはこうだ。


 


 そう。

 この世界──高校では周囲の男共はメインヒロイン達にうつつを抜かしているせいで、その他の女子に恋愛的な興味があまりないのである。

 つまり、メインヒロイン以外の女子は人気が殆どなく狙いたい放題というわけだ。

 えっ?『メインヒロインの知識があるならそっちを攻略しないのか?』って。

 嫌だよ。アイツら惚れさせるためにはヤンキー二人と乱闘したり、増水した川の中に飛び込んで助けたり、複雑な家庭問題を解決しないといけないとか面倒過ぎるわ!

 おっと、話が脱線してしまったが用は好みの女の子を選びたい放題の最高の状況てこと。

 そんなわけで、当然俺好みの子を探しました。

 すると、物凄い子を見つけてしまった。


「?どうかしましたか、中山君。私の顔に何か付いてますか?」

「別に何もついてないぞ。悪い、何となく眺めてただけだ」


 今年から同じクラスになった隣の席の田中さんだ。

 腰まで伸びるふわふわとした茶髪。アーモンド型の大きな瞳に柔らかい目尻。桜色の綺麗な唇。ブラザーの上からでも分かる豊かな胸。程よくしまった腰。安産型の大きな尻。ムチッリとした太もも。

 全体的に柔らかそうで、ほんわかとした雰囲気を放つ可愛らしい美少女である。


「何ですか、それ。私なんか見てても楽しくないでしょうに。ほら、春野さんや夏瀬さんなんかオススメですよ」

「あ〜、あの二人はキラキラしててちょっとな」

「むぅ、それはずっと見てられるくらい私がキラキラしてないって意味ですか?」

「違ぇよ。別に田中さんもずっと見てたら目が焼かれるくらい可愛いから」

「か、かわっ!?」

「あぁ、もう駄目だ。目が焼け死ぬ〜」

「もう、中山君の馬鹿!揶揄わないでくださいよ」


 頬を膨らませながら俺をポカポカと叩いてくる姿は天使そのもの。この世にこれほど可愛い存在がいて良いのかと思うレベルだ。

 しかし、それなのにクラスメイトにそれとなく『田中さん良いよなぁ』と言ったら、『あ〜……田中さんね。田中さん良いよな』と微妙な反応をされてしまうのだ。

 本当に解せない。

 お前ら正気か?面倒臭いツンデレ女や毒舌乳牛よりも、献身元気っ子ロリ義妹よりも田中さんが一番可愛いだろうが!マジファッ○!

 …………………………。

 ふぅ。まぁ、いい。

 俺は学校の男子達がメインヒロインに夢中になっている間に、世界で一番可愛い(主観)田中さんと付き合ってやるぜ!


 で、読者の皆さんにもう一個質問なんだけどここから更に仲を深めるためにはどうすればいいのだろうか?

 前世からずっと男友達とばっかで女の子と手も繋いだことがない生粋のチェリーボーイなせいで、女子との距離感の縮めかたが全く分からんのだが。

 至急コメント欄に有用なアドバイスを求む。

 

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