九
皇帝様の部屋の前には、案内の人が待機していた。
扉から出てきたあたしを、横目でチラッと確認する。
透明感のある、綺麗な緑の瞳だ。
「どうぞ、こちらへ」
そう言って、歩き出した彼についていく。後ろを歩いていると、緩くウェーブした長い髪を、低い位置で束ねているのがわかった。
薄暗い中でもわかる、金色の髪だ。
壮国の人は、瞳の色はさまざまだけど、髪の色は黒だと聞いていた。
皮膚の色は白くも黒くもなく、健康的な肌色だって。
だけどこの人は、肌がとっても白いみたい。
途中で人が入れ替わったのかな?
いや、もしかしたら最初からいたのかも。
朝からずっと緊張していて、人の顔を気にする余裕なんてなかったから。
とりあえず今日を乗り切れたことで、ほんの少し気持ちが緩んだみたいだ。
長い長い階段を下りて、来た道を戻る。
案内の人が立ち止まったのは、あたしが最初に連れてこられた、角部屋の前だった。
案内の人が扉を開けると、すぐに中の様子が違うことがわかる。
さっきよりもずっと明るくて、人の気配がした。
「あっ、ちょうどよかった」
「今、お部屋が整ったところです」
扉が開いたことに気づいた二人が、パッとこちらを振り返った。
衣装はやっぱり上は白くて、下は深い青色の袴に、龍の刺繍が入っている。
どうやらこの服装が、壮国にお仕えする人たちの正装みたい。今まで会った人は、みんな同じものを着ていたから。
二人はタッタッとあたしに駆け寄って、綺麗にお辞儀をした。
二人とも真っ黒な髪を二つにまとめて、高いところでお団子にしてる。可愛い。
「ユニ族の方ですね、お初にお目にかかります、私は
「私は
身の回りのお世話なんて、自分でするものだと思ってた。
他国の人……それも、ユニなんて小さな民族にも、気を回してくれるなんて。
壮国の皇帝様は、ちゃんとしてる気がする。
あれだ、礼儀ってやつを、きちんとわかってる。
育ちがいいんだ。高い教育を受けてる。
あたしなんかと違って。
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