その一言で部屋を出て、案内人の後ろを歩く。

 来た時よりも全体的に暗いのは、お城についた窓やすりガラスから、迎える光がなくなったせい。

 日が暮れた城内は、廊下に配置された明かりに照らされ、幻想的ながら不気味な雰囲気を醸し出している。

 階段をたくさん上り続けて、足がだるくなってきた頃、突然景色が変わった。

 今まで城内を囲むように、廊下と部屋が並んでいたのに、それがいきなり途切れた。

 階段の上にあったのは、大きな扉。

 ここに来るまで見てきた扉の、三個分はありそうだ。

 金色の縁に囲まれた青いそれは、あたしを拒むように立ちはだかっている。

 だけどここで、引き返すことは許されない。

 案内人が扉の端に寄って、後ろに手を組んで待機する。

 その腰に携えた細いつるぎ

 あたしの命は風前の灯火だ。

 フーと細く息を吐いて、金の取っ手に指をかける。

 さっきあたしが通された部屋のは、丸くて小さくて、回すやつだった。

 だけどここのは、四角い長方形で、手前に引くやつだ。

 かけた手に力を入れて、ずっしり重い扉を開く。

 すると、ギィと音が鳴って、徐々に部屋の中が明らかになる。

 最初に気づいたのは、滲むようなほのかな光。

 それは、部屋の中央に陣取る、青いカーテンから漏れ出している。

 そっと中に入って、扉を静かに閉めると、改めて室内の方を向いた。

 視線をあちらこちらへ、目だけコロコロ動かして確認する。

 広い。とにかく広い。

 階段がもうなかったってことは、ここがお城の一番上だ。

 ということは、この階には、この部屋しかないってこと。

 あまりに広いから、中央の明かりが届ききらなくて、端の方は薄暗くてよく見えない。

 扉から直線上に存在する青いカーテン、よく見るとそれは、天井についた金具みたいなものから垂れている。金色の硬そうな、シャラシャラした飾りみたいなやつ。

 長四角のベッドを囲むカーテンから、うっすら人型が透けているのがわかる。

 心臓が痛い。

 きっと殺される。

 おばあちゃん、おばあちゃん。


『本当に、本当に……ピケが助けてほしい時に、このペンダントを開けるんだよ』


 そう言ってた、おばあちゃんの声が蘇る。


「ユニ族の者だな」

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