三
そんなことを考えながら、仰け反りすぎて倒れそうになった頃、迎えの人が門を開いた。
ゾウやキリンも余裕で通れそうな、大きくて立派な門。
そこにちっぽけなあたしが足を踏み入れて、恐る恐る先に進む。
ここは、玄関ってやつかな?
すごく広い場所だ。ピカピカに光った灰色の床に、左右対称に柱みたいなものがたくさんついている。
青いそれには、金色で難しい文字がたくさん刻まれてるけど、あたしにはなんて書いてあるかわからない。
中央には青い布が敷かれていて、奥の段差まで道みたいに続いてる。その段差の上には、青い椅子が置いてあって、誰かが座って話でもするのかなと思った。
その広場……みたいな場所を横切って、奥にある階段を上る。
二階に着くと、右手にずらりと扉が並んでいる。金色の龍が掘られた青いそれらを横切り、内廊下を進んでいく。
やがて前を歩く人が立ち止まったのは、一番端にある扉の前だった。
迎えの人が金色の丸い取っ手を引くと、あたしにここに入れと告げる。
言われるがまま中に入ると、迎えの人はなにも言わずに扉を閉めて去っていった。
焦げ茶色の床、家具もなにもない、殺風景な部屋だ。
だけどゴミはないし、虫もいなくて、嫌な匂いもしない。
こんな場所、あたしには贅沢すぎる。
きっととりあえず預けられただけで、後からひどい場所に連れていかれるんだろう。
冷たい牢屋かな、ううん、ひどかったら、今日にでも――。
やだな、怖い。でもどうしようもない。
あたしが選ばれたから。
みんなにアンタしかいないって言われたから。
ユニは小さな島国だから、とっくの昔に滅ぼされていてもおかしくなかった。
それでも今があるのは、不思議な力があるから。
ヒーリスト。
癒しの効果を持つ者という意味で、
それがあたしたちユニの民に、神様から与えられた能力。と、言われてる。
どんな傷や病も治すと呼ばれる力と引き換えに、他の国から支援を受け、暮らしてる。
だから大きな国の頼みは断れない。
今回みたいに、ものすごく怖い人が相手だったとしても。
だけど問題はそこだけじゃない。
一番は、あたし自身にまだ――。
部屋の隅、冷たい床の上にうずくまり、自分を抱きしめて時を過ごす。
どれくらい時間が経ったのか、わからなくなった頃、部屋が開いて迎えの人がやって来た。
「参りましょう、陛下がお呼びです」
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