二
服と同じような素材でできた靴。
ガラスの破片なんかがあると、平気で突き抜けてきて、何回も怪我をした。
だけどここは、そんな心配はないみたい。
もう一度馬車に乗って、目的地に向かう。
凸凹道が多いユニと違って、あまり馬車が揺れないから、馬も歩きやすそうだなと思った。
青々とした森を抜けて、緩やかな坂道を行く。
小窓は横についているから、前方の景色は見えない。ただ流れる風景が過ぎていくだけだ。
やがて揺れが収まると、迎えの人に指示され、馬車を降りる。
そして灰色の石畳に足をつけて、ゆっくりと顔を上げた。
「……う、わあぁ……」
驚きと感動が混じった声を漏らす。
前方に見える、どこまでも高く続いた石造りの階段。
その左右には、同じ大きさをしたお城が、中央の階段を守るように配置されてる。
向かって左側が紫色、右側が赤色の平らな屋根で、いくつも重なるように建っている。数を数えてみると、三階建だとわかった。
ユニにはないものばかりで、ついキョロキョロと辺りを見回していると、迎えの人に注意されて、背筋を伸ばした。
先頭の人に続いて、長い長い階段を上る。
途中でチラッと後ろを見てみると、地面があまりに遠くて、急いで顔の向きを戻した。
ひゃー、すごいっ、怖い怖いってドキドキしながら、階段を踏み外さないように気をつける。
こんな場所から落ちたら、ひとたまりもない。
かといって今から向かう場所が、安全かと言われたら、そうじゃないんだけど……。
なんとか階段を上りきると、両膝に手を当てて息を整える。
それからやっと上体を起こしたあたしは、目の前に広がる景色に息を呑んだ。
階段だけ見て上がってきたから、上になにがあるか確認してなかった。
下にあったお城とは比べものにならない、重厚で迫力満点の巨城。
デザインは下にあったものと似てるけど、こっちの方が凝ってる。
提灯って言うのかな?
金色の丸いそれが、各階ごとに等間隔にぶら下がっている。
グーンと背中を反らすと、うっすら茜色に染まった空が見える。
一、二、三、四……数えるのが大変なくらい、上に続いてるお城。階が高くなるごとに、どんどん小さくなって、全体的に見ると、三角に近い形になってるみたいだ。
そしてその一番高い、屋根の両端に龍がいた。
まるであれみたいだ、あれ、あれ……絵本で見たことがある、竜宮城ってやつ。
こんなおっきなお城、御伽噺にしかないと思っていたのに、本当にあるなんてびっくりだ。
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