一、初めて会った日

 ユニは、海に囲まれた小さな島国。

 だから、馬で移動すれば、さほど時間がかからず海に到着する。

 木の枝やガラスの破片、貝殻やワカメが散らばった砂浜。

 その向こう岸に、海みたいな色の大きな船が見える。

 ちょっと反り返った靴みたいな形をしていて、先っぽに金色の龍の顔がついてる。

 船の乗り口が開いて、頑丈な板が下ろされると、あたしたちは馬車を降りた。

 なだらかな傾斜の板を上る馬と、空になった車体を押す人たち。みんな迎えの人で、同じ衣装を着てる。

 馬車が船に乗り込むと、あたしも続いて板を上る。

 全員乗ったら、板がしまわれて、出入り口が塞がれた。

 あたしは船の、真ん中辺りの席に座る。

 焦茶色のしっかりした木造の椅子。後ろには馬車と、周りには迎えの人たち。

 立派な船だから、これだけたくさん乗せても、びくともしない。

 やがて立派な帆がいくつも上がり、風を受けて、船が出発する。

 自分は全然動いてないのに、どんどん場所が変わるって、なんか不思議だった。

 島を出るのが初めてならば、船に乗るのも初めてだ。

 意外と揺れないんだな、酔ったりするのかなとか、いろいろ考えてるうちに、だんだん眠くなってきた。

 昨夜はこれからのことを考えて、なかなか眠れなかったから、今頃になって睡魔がやってきたみたい。

 ずいぶん時間が経ったと思う、あたしは迎えの人に声をかけられ、目を覚ました。

 焦って服の袖で涎を拭うと、薄汚れた布がさらに汚くなってしまった。

 もうすぐ着くからと言われ、顔を上げると、先頭に見える景色に目を見開いた。

 まだ距離があるのに、視界に収まりきれない大陸。

 壮国そうこく――世界一、二を争う力を持つ、アジアに位置する大国だ。

 一体、あたしが育った島の、何個分あるのだろう。いや、何十個、何百個……これ以上の数え方がわからない。

 大陸が近づくと、緑の木々や、建物らしきものが見えてくる。

 雰囲気からして、ユニとの違いが伝わってきた。

 船が岸に着くと、船の出入り口が開いて、先に馬と車体が降りる。

 その後で板を下ったあたしは、白い砂浜を踏みしめた。

 ユニの乾燥した、パリパリで大きな粒とは違う。

 思わず触りたくなるような、サラサラで小さい粒だ。

 海に漂着したゴミなんかも散乱していないし、手入れが行き届いているようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る