第4話 家族

「それで、何があったの?」と徹。


「お兄ちゃんがかわいそうだから、自分たちの家に引き取るっておじいちゃんが言い出したの」と絵里子。


「ああ、そうなんだ」と徹。


「お兄ちゃん、嫌じゃないの!」と絵里子。


「ああ、エアコンのある部屋がもらえたらうれしいよ」と徹。


「私たち、離ればなれになるのよ!」と絵里子。


「でも父さんと母さんは喜んでるだろ。それに離ればなれと言ったって、電車で二駅しか離れてないし」と徹。


「それだけじゃないの。おじいさんが遺産をお兄ちゃんだけに相続させるって」と絵里子。「それで、お父さんと叔父さんが怒ってしまったの。」


「おじいさんは言ってるだけでしょ。以前にも喧嘩になったとき、そんな話をしていたよ」と徹。


「だけど今回は本気なの。話が進んでて、お母さんが離婚するって言いだしてるの」と絵里子。


「やっぱり遺産目当てだったんだ」と徹。


 絵里子は徹の頬を思い切りビンタした。「お母さんのことを悪く言わないで!何も知らないくせに!」と絵里子。


「エリー、お兄さんがかわいそうよ」と佳耶。


「佳耶は黙ってて!」と絵里子。


「エリーが悪いのよ。ちゃんと説明しないから」と佳耶。「お兄さんは何も知らないのよ。」


「え、ぼくは何も知らない?」と徹。


「ええ、何も。でもわたしが教えてあげるわ」と佳耶。


「私が説明するって言ってるでしょ!横から口を出さないで!」と絵里子。


「お父さんが最初の妻、つまりお兄ちゃんの母親と離婚して、その翌年に二人目の妻、私の母親と結婚した。ここまではお兄ちゃんも知ってるでしょ」と絵里子。


「うん」と徹。


「その後、私が生まれたけれど、月足らずだったの」と絵里子。


「未熟児だったんだ」と徹。


「違うわよ。結婚したとき、すでに身ごもってたの」と絵里子。


「そうなんだ、そんなこと、いつ知ったの?」と徹。


「何年も前に気がついたわ。結婚式の日付と私の誕生日が近すぎるのよ。結婚式の半年後に私が生まれてるのよ。変でしょ?」と絵里子。


「そうなのか、知らなかったよ」と徹。


「それで、お母さんに理由を聞いたの」と絵里子。


「新婦が妊娠してたなんて、騒ぎにならなかったの?」と徹。


「お父さんは、妊娠しててもかまわないからって、結婚を迫ったそうよ」と絵里子。


「ふうん。強引だな。お父さんらしいよ」と徹。


「そのとき、お父さんはお腹の中の子供、つまり私を自分の娘として育てることを約束した」と絵里子。「それから、結婚したときに父の家族は妊娠について知っていたそうよ。」


「本当の父親はどうなったの?後から問題になりそうだけど」と徹。


「一応、うまく収まったわ」と絵里子。


「そうなんだ」と徹。

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