月海
波打ち際の少し湿った砂が、足先を冷やす。頬を掠める、磯の匂いを大分に含んだ冷ややかな風は、日が落ちてから随分と時間が経ったことを伝えている。
深く黒い、吸い込まれそうな海に、浅葱に染まった、どこまでも飛んでいけそうな空。月輝だけが、辺りを照らす。
誰もいないここで、人影は君と僕のものだけ。
「…ねぇ、あんなにも、月が綺麗」
優しく照らされた輪郭が、黒く落ちた影から際立って、幻惑的だ。かの姫を恋い慕った帝はこのような気持ちだったのだろうか。
「そうだね」
月並みな返事しかできないから、君は月に帰ってしまうかもしれない。
徒花と咲かんとす 和藤内琥珀 @watounai-kohaku123
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